近年、悪化した都市環境の改善のために、様々な手法が用いられている。ドイツのシュツットガルト市はヨーロッパ内陸の盆地底に位置しているため、風が弱く、逆転層の発達による冬季の大気汚染が問題となっている。この問題に対して「風の道」に代表される都市計画のあり方が研究され、実践されている。「風の道」とは、夜間に山や丘の斜面を吹きおりてくる冷気を都市内に導き、この風を利用して大気汚染物質を拡散させるというものである。ドイツでは「風の道」は主に大気汚染の緩和が目的であるが、都市で発生した熱も奪い取るため、ヒートアイランド現象の対策としても有効な手段といえる。
日本でも、ヒートアイランド現象は夏季の熱ストレスを招く熱汚染として位置づけられ、都市での生活に関する快適性を著しく損なうと考えられている。竹村らによって六甲山南麓市街地における冷気流が市街地内の夜間の熱環境に及ぼす影響について考察されている。長野盆地においても冷気湖、山風が発生することが報告され、これまで当研究室でも山風に関する研究がなされてきた。しかし、春季と秋季における実測データを使用しており、ヒートアイランドの緩和が最も必要な夏季における実測を行う必要がある。
そこで本研究では長野市における熱環境改善に山風を活かすために夏季の山風の特性、影響を把握する。また、湿度によって山風の影響の有無を特定するために、山風による気温変化と湿度変化の関係について考察を行う。
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