3. 化学物質の危険性と安全な取り扱い

3.2 有機溶剤

有機溶剤は、化学物質をよく溶かす性質を有しており、様々な用途に用いられているが、蒸発しやすく、脂肪を溶かすことから、呼吸器や皮膚から吸収されることが知られている。

体内に吸収された有機溶剤は中枢神経等へ作用して、急性中毒や慢性中毒等の健康障害を発生させることがある。このような有機溶剤中毒を予防するため有機溶剤中毒予防規則が制定されている。

(1) 有機溶剤の種類と健康障害

  1. 芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)
    高濃度で中枢神経に作用して興奮状態を経て意識消失を起こす。低濃度の長期間暴露では造血障害を起こす。また皮膚や粘膜を刺激する。
  2. 塩化芳香族炭化水素類(クロルベンゼン、o-ジクロルベンゼン等)
    麻酔作用、皮膚刺激、肝・腎を侵すものが多い。
  3. 塩化脂肪族炭化水素類(クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロルエチレン等)
    麻酔作用、皮膚刺激、肝・腎を侵すものが多い。
  4. アルコール類(メタノール、エタノールなど)
    軽い麻酔作用と粘膜刺激作用がある。特にメタノールは視神経の障害が特徴である。
  5. エステル類(酢酸エチル等)
    高濃度で粘膜刺激や麻酔作用がある。
  6. エーテル類(ジエチルエーテル等)
    麻酔作用が非常に強い。
  7. ケトン類(アセトン、ブタノン等)
    軽度の粘膜刺激および麻酔作用
  8. 脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)
    ノルマルヘキサンは多発性神経炎を引き起こす。

(2) 有機溶剤中毒の予防

基本は有機溶剤と接触しないことが大切である。有機溶剤を扱う際にはドラフト内で扱うか換気の良い場所で実験を行う。有機溶剤は非常に蒸発しやすく拡散しにくく、しかも空気より密度が大きいため、高濃度で床面、地面に滞留しやすい。したがって十分に換気を実施しながら実験を行う必要がある。

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