コシヒカリの多収栽培に関する研究

コシヒカリの多収栽培に関する研究


信州大学農学部のある、長野県南箕輪村、隣接の伊那市は全国トップレベルの
イネの収量を誇っています(日本全国の平均が500kg/10a程度に対し、南箕輪村、
伊那市は600kg/10aを越える水準で、800-900kg/10aの多収をコシヒカリで
あげている篤農家もある)。

今の日本ではお米の研究は味(食味)の改善に集中する傾向にあり、多収の研究
では研究費もつかないような状況です。しかし、世界の食料生産の将来、特に米を
主食とするアジアの食料と人口の状況を見れば、食料増産のための多収の
研究の国際的重要性は明らかです。米の生産は今後20年間で30%以上増やさなければ
ならないと見積られています。しかも、これまでのように、農薬や化学肥料を大量に
使うようなやり方はもうできません。また、農地は減少しつつあり、農業に使える
水資源も減少しています。さらには、地球温暖化のような不利な条件も加わるかも
しれません。

20年間で30%以上の増産は容易に達成できるものとは、とても言えません。
増産に向けた研究には一刻の余裕もないというべきでしょう。

現実に多収を示しているイネの生長の特徴を詳しく解析することは、
多収栽培技術の確立や多収品種の育成に大いに役立つと考えています。
本研究室では、多収のコシヒカリの秘密を探るべく、根の生長や根の活性に
注目して、地上部植物体の生長との関係や土壌環境(酸化還元電位、二価鉄濃度、
アンモニア態窒素濃度)との関係に関する調査を進めています。


根はどうやって調査するのか?

  根の採取方法(新根だけを採取する方法)

  根の活性(呼吸速度)と根長の調査方法



多収コシヒカリの生育の解析



コシヒカリでコンスタントに900kg/10a前後の多収を得ている農家(春日氏)と農学部附属農場とで比較調査を行なって、多収コシヒカリの生育の特徴を明らかにしようとしている。

根系だけでなく、地上部の光環境や生育とについても調査して、根系と地上部生育との相関関係について解析を進めており、1998年度はグラフに示すような生育パターンの特徴的な違いがみられた。

多収水田(春日)では、穂肥施用期に根の活性が高いことが穂肥の効果を高め、高収量につながっている可能性がある。


平均的収量レベルの水田と多収水田では、根の活性の推移パターンに大きな違いが見られた
信大農学部紀要第37巻1号(2000)


[ 戻る ]