植物って不思議! (written by M. Hagiwara)

植物の寿命や形は、動物の寿命や形に比べると、はるかに変異が大きく、植物の寿命や形は、ほとんど定まったものではないのです。植物には決まった寿命や形はない!これって、不思議なことと思いませんか?

1.では、まず寿命を考えてみましょう

動物の場合

人:せいぜい100年ちょっと  イヌ:せいぜい20年  ゾウ:100年くらい

というように、種によって寿命はほぼ決まっていて、その寿命を何倍も上回る期間生き続けるということはありません。

植物の場合はというと

イネ:普通は数ヶ月〜10ヶ月までくらい
だが、長日条件におけばいつまでも開花せずに生長を続けます。
アサガオ:普通は数ヶ月
だが、芽生え(子葉のみの個体)を暗黒下に数日おいて短日条件を与えると、子葉のみの段階で開花し、その後数週間で結実して枯死します。一方、芽生えを24時間日長の条件下におくと、開花せず何年でも成長を続けます。
樹木:長いものでは数百年〜数千年
こんなに長い寿命をもつ生物は他にはありません。


植物にはそもそも「寿命」という考え方、つまり、ある一定期間で死に至るという概念が必ずしも当てはまらないようです。「寿命」は環境次第でいくらでも変わるので。


2.形はどうか?

動物の場合
人:人の形をしている(人種や年齢・性別により多少の差異はあるが、基本的な形に違いはない)
大部分の動物では、同じ種の動物(例えば、アフリカ象、モンシロチョウというように)に限れば、形はほぼ一定です。
(軟体動物などは形がやや不定と言えるかも知れませんが

植物の場合
「植物だって、種によって形は決まっている」といえるでしょうか?
確かに、普通見る植物には種によって特有の形があります。松の形と杉の形は確かに違います。イネの形とダイズの形も全然違います。なので、遠目でみても、畑に栽培されている作物が何かは、作物の大きさ・形・色などからおおよそ判断できます。
でも、同じ松でも、世の中に同じ形(同じ枝分かれの仕方)のものは2つとありません。一方、人間の形は人類すべてに共通で「人」の形をしていない「人」は考えられませんね。

このように、植物と動物を比較すれば、「植物の形は決まっていないが、動物の形は決まっている」と言っても良いと言えるでしょう。

普通の環境下でも形の決まっていない植物に、さらに、普通じゃない環境を与えると、植物の形は劇的に変わってしまいます。その代表例が「モヤシ」です。光を当てない、あるいは弱い光しか当てずに成長させた植物は、通常の光環境の下で育った場合とは似てもにつかない形に変身します。
人間や動物も、普通じゃない環境(極度の栄養不良状態などにする)におかれると形が多少は変化しますが、「モヤシ人間」といえるように劇的に形が変わってしまうことはありません。過食により、おおよそ人間とは思えない体重にまで太ってしまった例もあるけれど...。

3.光が植物に及ぼす影響

発生や分化、成長の過程が光環境によってコントロールされるという「光形態形成」は環境に対する植物に特有の反応であり、植物と光との非常に密接な関わりを示しています。

動物(人)にも光は影響を及ぼしていて、日中(特に午後)太陽光を浴びることで睡眠に関係する物質であるメラトニンの生成が促される。しかし植物の場合、光環境によって形も色も劇的に変わってしまうし、体内成分までも変ってしまいます。例えば、チャの渋みの元であるタンニンや旨みの元であるテアニンの量は光環境で大きく変わります。