領域統括挨拶




 高齢化社会が進むと身体に障害をもって生きる方が増え、その生活の質の向上が医学・医療の大きな課題になってきます。この時、医療機器が高機能化、小型軽量化に成功すれば、それは自然に生体埋込型・装着型へと向かいます。更に再生医療の急速な進歩により、生体材料と生体組織のハイブリッドデバイスは驚くほど速く実現します。このような医療機器革命は必然ですが、その波の最先端に日本が躍り出るためには何が必要でしょうか。

 私達の答えは、「情報」です。これまでの生体埋込型・装着型デバイス開発は、個々の診療科の狭い専門分野で特化して行われてきました。例えば人工心臓と人工関節は全く関係なく誕生し、交流なく開発が進められてきました。しかし、この2つの生体埋込型デバイスの課題には、生体親和性・耐久性・感染予防など共通項がたくさんあります。それならこれらの項目の「情報」を共有すれば、より効率的に、高度に、安全に、安価に開発が進められるのではないでしょうか。この医療機器独特の閉鎖性を打破することができれば、既存製品の改良だけでなく、全く新しい生体埋込型・装着型デバイスの開発にも大きく貢献することができます。まさにオープンイノベーションが最も有効な領域なのです。

 私達が構築する「埋込型・装着型デバイス共創コンソーシアム」では、「情報」を集積して解析し、活用できる形で社会に提供します。これが「生理学的データ統合システム」です。もちろん医療機器開発の「情報」は企業の宝です。大切に、安全に、最新技術を駆使してシステムを構築していきます。「情報」が集まれば集まるほどその価値が高くなり、デバイス開発の基盤となるだけでなく、医療機器承認取得のためのツールボックスにまでシステムを成長させることができます。更に進化させて学問にまで高め、新学域「生体適合システム学」を創成することが目標です。

 多くの参画企業・研究機関と共創コンソーシアムを組み、一体となって初めてのプロジェクトに挑戦できることは、私達の大きな喜びです。世界中の人々の幸せに貢献する生体埋込型・装着型デバイスを、日本が先頭に立って発信していく未来を一緒に夢見てくださる方々のご参加をお待ちしています。興味のある方は、ぜひご一報ください。皆様のご支援を、よろしくお願い申し上げます。

信州大学 先鋭領域融合研究群 バイオメディカル研究所
所長 齋藤直人