信州ブックレットシリーズ003
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24同じ中国人でありながら,2つのタイプの人たちがいると言われます。二元的社会であることによって,この電子廃棄物の解体が可能になっている,といいます。 どういうことか。「地元人」は,工場の支配人であり,経済的に豊かであり,肉体労働や汚染労働は嫌だと言っている人たちです。これが,宗族組織(家族組織)によって支えられて,その大きな家族の単位で,電子廃棄物の解体産業を経営としてやっている。貴嶼村内部にも分業があって,その販売ルートは,「地元人」がそれぞれの系列で握っている。 そういうネットワークがあることが,電子廃棄物の流入・加工・流出のプロセス,工程を,非常に見えにくいものにしている。強い排外意識,暴力的習慣,低い遵法意識̶̶これらが環境意識の問題と関係します。宗族組織が強固に残っていることが,外部に対して,閉鎖的にします。例えばNGOがやってきてテレビに撮るときや,私たちも実はすごい妨害を受けたのですが,外国人が現地調査をやる際の,大きな防壁になっています。そのようにして,電子ごみ解体産業が持続している,という関係になります。 では,実際に仕事をしているのは誰かというと,これがいわゆる「外地人」になります。10万人以上の出稼ぎ労働者がいて,主な出身地は農村地帯で,四川,湖南,江西省等から,ブローカーがいて,劣悪な労働条件を受容し,低賃金でも働きたい若者を連れてくる。そこで少しでもお金が貯まったら,郷里の家族に仕送りする。これは,中国で一般的に見られるかたちです。 ただし,深圳や東莞のある程度近代的な工場,日系企業みたいなところだったら,もう少し待遇がまともなのですが,貴嶼村の場合には,日本では「たこ部屋」とでも言いましょうか,戦前の「蟹工船」でしょうか,きわめて劣悪な状態のもとで,奥地の農村出身の人たちが使われている。 おまけに「外地人」は,「地元人」により差別されている。だから「地元人」に対して敵意を持っている。逆に「地元人」は,「外地人」を信頼せず,たんなる労働力と考えているから,例えば商品が盗まれるのではないかと,厳しい監視体制を敷く。 しかしながら,この辺は私たちの分析になりますが,「地元人」と「外地人」は,持ちつ持たれつと言いますか,大量の安価な労働力とサービス業の支え

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