信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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は,津波それ自体ではなく,津波災害による死亡のことです。 リスクである限りは,まだ現実化していないので,リスクが現実化しないような対応を事前にとることができます。そのためには,リスクの認知水準を高めておくことが肝心です。三陸地方はハイリスクな土地ですから,そういう意味では,必ず,津波警報のたびに逃げるという対応をとることで,リスクの自覚をあらたにすることができますし,実際にそうされてきて,ハイリスクが現実化するのを避けることができたのではないかと思います。安全は安心ではない 災害は,防災の基準を超えるから「災害」であって,したがってあらゆる災害は想定外の出来事と言われます。防災基準はありますが,災害になるには許容量を超えたものが来るから災害になるわけであって,食い止められなかった。そういう意味では,あらゆる災害は常に想定外だということですから,「想定外」は理由にならないわけです。それを織り込んで対応しなければいけません。 しかも,リスク・コミュニケーションという問題もあります。専門家は,何が分かっていて,何が分からないのか,明確に述べる必要がある。これができないと,信頼されない。信頼されないと,その人が何を言っても,住民は安心しません。いくら「安全です」と連呼しても,その報告をしている担当者が,あるいは行政とか政府が信頼されていないと,そもそも,いくら安全宣言をしても,住民の安心にはつながらないという現象になります。そのためには,不安感を取り除くとか,信用を高めておくことが求められるということです。67
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