信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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にしなければいけないので,がんだけれども,がんではないと判断するような偽陰性は避けなければいけない。致命的な失敗になってしまうからです。ですから,偽陰性を少なくするような検査手段を用いるわけです。 そうすると,健康だけれども何か「疑いあり」と出てしまう場合があるけれども,そのコストは引き受ける。それよりも,がんの人を見逃してしまうことのほうが致命的なミスなので,それを避けるようにする。トレード・オフの解消法 がん検査の場合,二段階の検査を行うことで,エラーのトレード・オフが大きく改善されます。最初に,偽陰性,第2種のエラーの少ない検査をします。つまり,本当はがんなのに,がんではないと誤って判断する可能性が少ない検査です。言い換えると,がんであるときに高い確率で陽性が出る検査です。次に,偽陽性,第1種のエラーの少ない検査をします。つまり,本当はがんでないのにがんであると誤って判断する可能性が少ない検査です。これは,がんでないときに高い確率で陰性と出る検査です。がんでないのに,がんの手術をされてしまうようなミスを避けることができます(第一段階の検査は除外診断,第二段階の検査は確定診断と呼ばれます)。 このように二段階のプロセスを経ることによって,エラーのトレード・オフの問題は克服できるわけです。一度で両方を達成できるような検査手法はないので,二段階で,この問題に対応しているのが医療です。それをいっぺんにやろうとするから,トレード・オフになるのであって,二段階に分けてやればトレード・オフではなくなるという話です。50

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