○国立大学法人信州大学基本衛生指針
(平成16年4月1日国立大学法人信州大学指針第13号)
第1 目的
この指針は,国立大学法人信州大学における有害な作業環境の衛生基準,職場の衛生基準,VDT作業環境その他職場の衛生管理に関し必要な事項を定める。
第2 一般環境基準
1
有害物を取り扱い,ガス,蒸気又は粉じんを発散し,有害な光線又は超音波にさらされ,騒音又は振動を発し,病原体によって汚染される等有害な職場においては,その原因を除去するため,代替物の使用,作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない。
2
ガス,蒸気又は粉じんを発散する職場においては,空気中のガス,蒸気又は粉じんの含有濃度が有害な程度にならないようにするため,発散源を密閉する設備,局所排気装置又は全体換気装置を設ける等必要な措置を講じなければならない。
3
自然換気が不十分なところにおいては,内燃機関を有する機械を使用してはならない。
ただし,排気ガスによる健康障害を防止するために当該場所を換気するときは,この限りでない。
4
有害物を含む排気を排出する局所排気装置等は,当該有害物の種類に応じて,吸収,燃焼,集じんその他の有効な方式による排気処理装置を設けなければならない。
5
有害物を含む排液については,当該有害物の種類に応じて,中和,沈でん,ろ過その他の有効な方式によって処理した後に排出しなければならない。
6
病原体により汚染された排気,排液又は廃棄物については,消毒,殺菌等適切な処理をした後に,排出し,又は廃棄しなければならない。
7
強烈な騒音を発する屋内における業務に従事するときは,その旨を標識によって明示するとともに,当該職場における騒音の伝ぱを防ぐため,隔壁を設ける等必要な措置を講じなければならない。
8
次の各号に掲げる場所には,関係者以外の者が立ち入ることを禁止し,かつ,その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。
(1)
多量の高熱物体を取り扱う場所又は著しく暑熱な場所
(2)
多量の低温物体を取り扱う場所又は著しく寒冷な場所
(3)
有害な光線又は超音波にさらされる場所
(4)
炭酸ガス濃度が1.5パーセントを超える場所,酸素濃度が18パーセントに満たない場所又は硫化水素濃度が100万分の10を超える場所
(5)
ガス,蒸気又は粉じんを発散する有害な場所
(6)
有害物を取り扱う場所
(7)
病原体による汚染のおそれの著しい場所
9
有害物若しくは病原体又はこれらによって汚染された物を,一定の場所に集積し,かつ,その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。
第3 衛生保護具
1
著しく暑熱又は寒冷な場所における業務,多量の高熱物体,低温物体又は有害物を取り扱う業務,有害な光線にさらされる業務,ガス,蒸気又は粉じんを発散する有害な場所における業務,病原体による汚染のおそれの著しい業務その他有害な業務においては,保護衣,保護眼鏡,呼吸用保護具等適切な保護具を使用しなければならない。
2
皮膚に障害を与える物を取り扱う業務又は有害物が皮膚から吸収され,若しくは侵入して,中毒若しくは感染をおこすおそれのある業務においては,塗布剤,不浸透性の保護衣,保護手袋又は履物等適切な保護具を使用しなければならない。
3
保護具は,同時に使用する職員の人数と同数以上を備え,常時有効かつ清潔に保持しなければならない。
第4 気積及び換気
1
職員が常時就業する室(以下「室」という。)の気積は,設備の占める容積及び床面から4メートルを超える高さにある空間を除き,常時就業する職員一人について,10立方メートル以上としなければならない。
2
室においては,窓その他の開口部の直接外気に向かって開放することができる部分の面積が,常時床面積の20分の1以上になるようにしなければならない。
ただし,換気が十分行われる性能を有する設備を設けたときは,この限りでない。
第5 採光及び照明
1
職員が常時就業する場所の作業面の照度を,次の表の左欄に掲げる業務の区分に応じて,同表の右欄に掲げる基準に適合させなければならない。
作業の区分
基準
精密な作業
300ルクス以上
普通の作業
150ルクス以上
粗な作業
70ルクス以上
2
採光及び照明については,明暗の対照が著しくなく,かつ,まぶしさを生じさせない方法とするとともに,職員が常時就業する場所の照明設備について,6月以内ごとに1回,定期に,点検しなければならない。
第6 温度及び湿度
暑熱,寒冷又は多湿の屋内の場所,有害のおそれがあるものについては,冷房,暖房,通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。
第7 睡眠及び仮眠の設備
夜間に睡眠又は就業の途中に仮眠をすることが必要な場合には,適当な睡眠又は仮眠の場所を,男性用と女性用に区別して設けるとともに,寝具その他必要な用品を備え,かつ,疾病感染を予防する措置を講じなければならない。
第8 清潔
1
日常行う清掃のほか,清掃及びねずみ,こん虫等の防除を,それぞれ6月以内ごとに1回,定期に,統一的に行わなければならない。
2
職場の清潔に注意し,廃棄物を定められた場所以外の場所に捨てないようにしなければならない。
3
有害物,腐敗しやすい物又は悪臭のある物による汚染のおそれがある床及び周壁を,必要に応じ洗浄しなければならない。
4
前項の床及び周壁並びに水その他の液体を多量に使用することにより湿潤のおそれがある床及び周壁を,不浸透性の材料で塗装し,かつ,排水に便利な構造としなければならない。
5
汚物を,一定の場所において露出しないように処理しなければならない。
6
病原体による汚染のおそれがある床,周壁,容器等を,必要に応じ,消毒しなければならない。
7
身体又は被服を汚染するおそれのある業務においては,洗眼,洗身若しくはうがいの設備,更衣設備又は洗たくのための設備を設けなければならない。
第9 食堂及び炊事場
1
食堂又は炊事場については,次の各号に定めるところによるものとする。
(1)
食堂と炊事場とは区別して設け,採光及び換気が十分であって,掃除に便利な構造とすること。
(2)
食堂の床面積は,食事の際の一人について,1平方メートル以上とすること。
(3)
食堂には,食卓及び食事をするためのいすを設けること。
(4)
便所及び廃物だめから適当な距離のある場所に設けること。
(5)
食器,食品材料等の消毒の設備を設けること。
(6)
食器,食品材料及び調味料の保存のために適切な設備を設けること。
(7)
はえその他の昆虫,ねずみ,犬,猫等の害を防ぐための設備を設けること。
(8)
飲用及び洗浄のために,清浄な水を十分に備えること。
(9)
炊事場の床は,不浸透性の材料で造り,かつ,洗浄及び排水に便利な構造とすること。
(10)
汚水及び廃物は,炊事場外において露出しないように処理し,沈でん槽を設けて排出する等有害とならないようにすること。
(11)
炊事従業員専用の休憩室及び便所を設けること。
(12)
炊事従業員には,炊事に不適当な伝染性の疾病にかかっている者を従事させないこと。
(13)
炊事従業員には,炊事専用の清潔な作業衣を使用させること。
(14)
炊事場には,炊事従業員以外の者をみだりに出入りさせないこと。
(15)
炊事場には,炊事場専用の履物を備え,土足のまま立ち入らせないこと。
2
法令に基づいて栄養士を配置する場合は,当該栄養士は,食品材料の調査又は選択,献立の作成,栄養価の算定,廃棄量の調査,職員のし好調査,栄養指導等を衛生管理者及び給食関係者と協力して行わなければならない。
第10 救急用具
1
負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え,その備付け場所及び使用方法を関係者に周知するとともに,当該救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。
2
救急用具及び材料として,少なくとも,次の各号に掲げる品目を備えておかなければならない。
(1)
包帯材料,ピンセット及び消毒薬
(2)
高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については,火傷薬
(3)
重傷者を生ずるおそれのある作業場については,止血帯,副木,担架等
第11 事務室等衛生基準
1
空気調和設備又は機械換気設備で中央管理方式のものを設けている場合は,室に供給される空気が,次の各号に適合するように,その設備を調整するものとする。
(1)
浮遊粉じん量が,1立方メートル中に0.15ミリグラム以下であること。
(2)
当該空気中に占める一酸化炭素及び炭酸ガスの含有率が,それぞれ100万分の10以下及び100万分の1,000以下であること。
(3)
室に流入する空気が,特定の者に直接,継続して及ばないようにし,かつ,室の気流を0.5メートル毎秒以下とすること。
(4)
中央管理方式の空気調和設備を設けている場合は,室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下とすること。
2
燃焼器具を使用する室又は箇所には,排気筒,換気扇その他の換気のための設備を設け,当該燃焼器具を使用するときは,毎日,当該器具の異常の有無を点検しなければならない。
3
中央管理方式の空気調和設備を設けている室について,2月以内ごとに1回,定期に,次の各号に掲げる事項を測定するものとする。
(1)
一酸化炭素及び炭酸ガスの含有率
(2)
室温及び外気温
(3)
相対湿度
4
前項の測定を行ったときは,その都度,次の各号に掲げる事項を記録して,これを3年間保存しなければならない。
(1)
測定日時
(2)
測定方法
(3)
測定箇所
(4)
測定条件
(5)
測定結果
(6)
測定を実施した者の氏名
(7)
測定結果に基づいて改善措置を講じたときは,当該措置の概要
5
機械による換気のための設備については,はじめて使用するとき,分解して改造又は修理を行ったとき及び2月以内ごとに1回,定期に,異常の有無を点検し,その結果を記録して,これを3年間保存しなければならない。
第12 VDT作業の基本的対応
1
VDT作業(ディスプレイ,キーボード等により構成されるVDT機器を使用して,データの入力・検索・照合等,文章・画像等の作成・編集・修正等,プログラミング,監視等を行う作業をいう。以下同じ。)に従事する者(以下「作業者」という。)の心身の負担を軽減するため,作業環境をVDT作業に適した状況に整備するとともに,VDT作業が過度に長時間にわたることのないように適正な作業管理を行わなければならない。
2
作業者の心身の負担を軽減し,作業者が支障なく作業を行うことができるよう,次の各号に掲げるところによりVDT作業に適した作業環境管理を行わなければならない。
(1)
照明及び採光
イ
室内は,できるだけ明暗の対照が著しくなく,かつ,まぶしさを生じさせないようにすること。
ロ
ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下,書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上1,000ルクス以下とすること。
ハ
ディスプレイ画面の明るさ,書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。
ニ
ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は,必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け,適切な明るさとなるようにすること。
(2)
グレアの防止
イ
ディスプレイ画面の位置,前後の傾き,左右の向き等を調整させること。
ロ
反射防止型ディスプレイを用いること。
ハ
間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。
ニ
その他グレアを防止するための有効な措置を講ずること。
(3)
騒音の低減措置
VDT機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には,騒音の低減措置を講じること。
3
作業者が,心身の負担が少なく作業を行うことができるよう,次の各号に掲げるところにより作業時間の管理を行うとともに,作業の特性や個々の作業者の特性に応じたVDT機器,関連什器等を整備し,適切な作業管理を行わなければならない。
(1)
作業時間
視覚負担をはじめとする心身の負担を軽減するため,ディスプレイ画面を注視する時間やキーを操作する時間をできるだけ短くすることが望ましく,他の作業を組み込むこと又は他の作業とのローテーションを実施することなどにより,1日の連続VDT作業時間が短くなるように配慮すること。
(2)
VDT機器
VDT機器を導入する際には,作業者への健康影響を考慮し,作業者が行う作業に最も適した機器を選択し,導入すること。
(3)
椅子
イ
安定しており,かつ,容易に移動できること。
ロ
床からの座面の高さは,作業者の体形に合わせて,適切な状態に調整できること。
ハ
複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合には,高さの調整が容易であり,調整中に座面が落下しない構造であること。
ニ
適当な背もたれを有していること。
背もたれは,傾きを調整できるものであること。
ホ
必要に応じて適当な長さのひじ掛けを有していること。
(4)
作業姿勢
イ
椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて,履物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。
十分な広さをもち,かつ,すべりにくい足台を必要に応じて備えること。
ロ
椅子と大腿部膝側背面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあり,大腿部に無理な圧力が加わらないようにすること。
(5)
ディスプレイ
イ
おおむね40センチメートル以上の視距離が確保できるようにし,この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。
ロ
ディスプレイは,その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか,やや下になる高さにすること。
ハ
ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく,かつ,適切な視野範囲になるようにすること。
4
作業環境を常に良好な状態に維持し,VDT作業に適したVDT機器等の状況を確保するため,次の各号に掲げるところにより点検及び清掃を行い,必要に応じ,改善措置を講じなければならない。
(1)
日常の点検
作業者は,日常の業務の一環として,業務開始前又は1日の適当な時間帯に,採光,グレアの防止,換気,静電気除去等について点検するほか,ディスプレイ,キーボード,マウス,椅子,机又は作業台等の点検を行うこと。
(2)
定期点検
照明及び採光,グレアの防止,騒音の低減,換気,温度及び湿度の調整,空気調和,静電気除去等の措置状況及びディスプレイ,キーボード,マウス,椅子,机又は作業台等の調整状況について定期に点検すること。
(3)
清掃
日常及び定期に作業場所,VDT機器等の清掃を行い,常に適正な状態に保持すること。
5
VDT機器を日常業務において使用する者には,1年以内ごとに1回,定期に,「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年厚生労働省行政指導通達基発第0405001号)に定める項目について,健康診断を行うものとする。
6
前項の健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し,有所見者に対して保健指導等の適切な措置を講じるとともに,予防対策の確立を図るものとする。
7
作業者及びその管理者に対して,職場における作業環境,作業方法の改善,適正な健康管理を円滑に行うため及びVDT作業による心身への負担の軽減を図ることができるよう,次の各号に掲げる事項の労働衛生教育を実施するものとする。
(1)
VDT作業の健康への影響
(2)
照明,採光及びグレアの防止
(3)
作業時間等
(4)
作業姿勢
(5)
VDT機器等の調整及び使用法
(6)
作業環境の維持管理
(7)
健康診断とその結果に基づく事後措置
(8)
健康相談の体制
(9)
職場体操等の実施
(10)
その他VDT作業に係る労働衛生上留意すべき事項
附 則
この指針は,平成16年4月1日から実施する。