信大NOW155号
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総力特集人文学を学ぶ人へのメッセージ澁谷:人文学部は、一般的にはネガティブなイメージが持たれる「嘘や虚構」を、大事にできる学部である。これは人文学部ならではのユニークさであり、面白いところだと言えそうですね。―金井:最後に、これから人文学を学ぶ人へのメッセージを、それぞれからお願いします。まずは仁木さんから。仁木:人間の暮らしにハード面とソフト面があったとして、柔らかい部分を引き受けてくれるのが人文の領域だと思うんです。ただ、ソフトなだけに壊れやすかったり傷つきやすかったりするんですけれども、大学で学問として学ぶことでより自分にフィットした形にできるのが、私は人文学であると思います。また、人文学は自分の人生だけでなく、自分が大切にしている家族や友人などの人生も一緒に豊かにしていけるような力があると思います。それともうひとつ、冒頭でもお話ししましたが、人文の領域はエンタメという性質が大きいと思いますので、今学んでいる学生には「君らが学んでいるのはエンタメやねんで」ということを、やはり強く伝えたいです。澁谷:たぶん今の「エンタメ」というお話とも関わることではないかと思うのですが、私がフランス文学の講義をしていて、うーん、どうもうまく授業できてないな、と感じるのは、知識の押しつけになっているときが多いようです。目指すところは、学生にフランスを友達にしてもらうというか、「オレの古くからのトモダチを紹介するから、君たちも付き合ってみたら」って感じで話ができればと思っています。 もうひとつ、授業では“文明”を伝えたいという気持ちがあります。フランスの作家、サン=テグジュペリが言っているような意味での“文明”です。この人は第二次世界大戦中にアメリカに亡命したのですが、同様に亡命したフランス人から、政治的な立場の違いのために結構いじめられています。特に辛辣だった詩人のアンドレ・ブルトンに彼は手紙を書いて、「立場はいろいろだけど、昼食を食べに来ないか。“鶏の丸焼き”を出すから。それが文明だろ」てなことを言っています。鶏の丸焼きと聞くと、なんだか素朴なホスピタリティーを感じます。ホストが客の好みを訊きながら、腿肉や手羽を切り分けてやるんでしょうね。こういうのって、運がよければ、いわば「祝祭的」な、かけがえのないひと時になりそう。あくまで、運がよければ、ですけど。ともあれ、私はこの手紙を読んで、「そうか、文明っていうのは鶏の丸焼きだったのか!」と思いました。人文学部の学生には、鶏の丸焼きの味わいを知ってもらいたいと思っています。佐瀬:「友達を作るみたいに、人文の学問を学ぶ」という澁谷先生のお話しを、なるほどと思ってお聞きしました。そもそも、大学で学ぶ大きな目的のひとつに、人生でかけがえのない大切な友達をつくるということもあると思うんです。来年度から大学院への進学を志望しているので、そのような感覚で私も人文の学問に取り組んでいけたらなって、考えています。佐々木:私は高校までは本当に自分の興味ある分野しか見ることができなかったのですが、信州大学の人文学部って、色々な分野の授業が必修になっていますよね。最初は必要に迫られて自分の関心のない分野の授業を受けていたのですが、実際に受けてみると、今まで当たり前だと思っていたことを違う角度から捉えることができたり、知識や教養の幅が広がる経験がありました。それが嬉しくて、友達に伝えたこともあります。信州大学の人文学部ってそのようなことができるところに面白さがあると思っていて、私もあと1年それを楽しんで学んでいきたいなと思っています。金井:最後に私から一言。仁木さんから人文学はある意味でエンターテインメントだというお話しがありました。たしかにそう思う一方で、自分だけでなく他者の人生を豊かにするとか、澁谷先生の鶏の丸焼きを通じた交流だとか、やっぱりそういう他者への思いみたいなものをどれだけちゃんと持てるかというところが人文学の一つの鍵なのかなと思って今日のお話を伺いました。「リベラルアーツ」という言葉がよく使われますよね。学ぶことによって自由になるということがあるけれど、人文で学ぶということは、自分が自由になるだけじゃなくて、その自由をどうやって他の人と分かち合えるかというところまで責任を持つことであり、そこで初めて人文学になるだろうなという気がしました。 皆さま、今日はありがとうございました。06友達をつくるように、人文学を学んでいけたら。(佐瀬)授業を通じて、文明というものを伝えていきたい。(澁谷)

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