信大NOW153号
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「フューチャーライフヴィレッジ」(上)は、様々な参加者が「未来の暮らし」、「未来への行動」に関する多種多様な問いと提案を持ち寄ることで、参加者や来場者の間での対話を生み出し、未来社会を共創していくことを目指した場。この中に設けられた「フューチャーライフエクスペリエンスステージ」(下)で、今回、信州大学医学部周産期のこころの医学講座の村上講師が”未来の「産後うつ」を予防する” をテーマに講演しました。加 者 へも妊 娠 中 のリフつわりの時期は動けないので、映画鑑賞や美味しい物を食べるなど、家でできることを中心に新たな楽しみを見つける人が多いですね」と話しました。また、会場の参これまでも産後うつの理解促進に向けて様々な場所で講演会を開催してきましたが、産婦人科などの専門職の方々に向けたものが大半でした。今回は一般向けで会場も万博ということで、正直どうなるか不安もありましたが、用意した席は満員となり、大きな手ごたえを掴むことができました。 特に、産後うつの当事者や妊婦ではない方も含めて、幅広い世代で、男女問わずご参加いただき、積極的に意見を述べていただけたことは、とても意義深かったと思います。未来の産後うつを予防するためには、当事者や妊婦ではない方も含めて、様々な方がこの問題を考える必要があるからです。今回のイベントが未来の産後うつの予防に少しでも貢献できれば幸甚です。レッシュ方法を聞くと、「妊娠期に配慮したマタニティヨガに通った」「身体に負担が少ないので、ミュージカルを観に行った」「ベランダで家庭菜園をしてリフレッシュしていた」などの様々な答えが返ってきて、多くの人がプレッシャーやストレスが掛かる環境下でも、工夫して楽しみを見出していることが伺えました。次に、村上講師は出産後に話題を移し、「出産後に自分の赤ちゃんをかわいいと思えない人がいること」に言及。その中には子育てで追い詰められてこころの状態が不 安 定であることが要因の場合もあり、周りが こうした“ こころのSOS”に気付いてあげることの重要さを指摘しました。本間アナウンサーが、「相談を受けたら、どのように返答しますか」と来場者に質問を投げかけると、「眠れていないと悲観的になりやすいので、私なら“眠れている?”ですね」という人や、「子育て中は自分の食事時間を確保できない人も多いので、“ちゃんと食べられている?”でしょうか」という答えが返ってきました。 これに対して、村上講師もこころの状態が不安定になる理由について、生活に関する資源が不足している場合が多いことを指摘。加えて、過去に精神疾患や精神的に大きな負荷のかかるライフイベントを経験した人も産後うつになりやすい傾向があり、目を向けて欲しいと会場に訴えました。こうした人に対しては、「周りの人が過去のことを丁寧に聞いてあげることが重要で、場合によっては助産師や保健師さんの力を借りることも必要だ」と話すと、来場者は真剣な様子で頷いていました。村上講師は2024年、全国で初めて「父親の産後うつ」の専門外来「周産期の父親の外来」を立ち上げていますが、イベントの最後に、男性でも産後うつに悩む人が増えていることに触れました。「男性でも育休取得が増える中で、育休中に社会的な居場所を失う感覚を持ち、調子を崩す人もいます。こうした事実を知って理解していく必要もあります」と話しました。村上講師の講演は、来場者との意見交換も大いに盛り上がり、産後うつというテーマへの関心の高さが伺えました。一方で、一般的にはまだまだ知られていない部分もあり、大阪・関西万博という国際的な場での啓発の機会は、産後うつの理解と予防へ向けてとても重要な機会のひとつになったと言えそうです。©Expo 2025 06 当事者だけでなく様々な人が参加し、意見を述べたことはとても意義深いことこころのSOSに気付く必要がある

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