フェロモンを放出し、カイコガの触角が搭載されたドローンの動きを確認する小型ドローンによる匂い源探索の世界記録を樹立した、次世代匂い追跡ドローン。従来モデルと比較し、飛行方法とエンクロージャの形状を主に改良した 昆虫や動物は、繁殖行動や危険の察知、食料探索などの場面において人間よりもはるかに高度な「嗅覚」を活用しています。例えばガ類のオスは、時には数キロ離れた地点にいるメスのフェロモンを感知して、メスを探し出すことができるのだそうです。信州大学学術研究院(繊維学系)照月大悟准教授らの研究グループは、こうした昆虫の匂い源探索行動に着目し、2021年、生きたカイコガの触角を小型ドローンに搭載して匂いの発生方向を識別しながら匂い源を探索することに世界で初めて成功しています。カイコガの触角を切り取って電極に接続し、触角が匂いを検出した際に発生する電気信号を取得することで匂いを認識するという仕組み(文・平尾 なつ樹)です。この技 術 は 、災害時の要救助者発見や、爆発物などの危険物質の探索などの場面で役立てることが期待できます。今回新たに開発した次世代匂い追跡ドローンは、従来2メートルだった探索範囲を5メートルに拡大し、さらには、匂い源探索精 度( 匂い源 定 位 成 功率)も2倍以上に向上しました。昆虫は、空気中で混じり合うさまざまな匂いの中から、自分が求める匂い源(交尾相手のフェロモンや餌場など)を見つけ出す高い能力を有しています。一方、人間にとっては離れた場所の匂い源を探し出すことは至難の業であり、機器等を用いても、匂い源の特定は非常に困難とされてきました。そんな中、信州大学学術研究院(繊維学系)の照月大悟准教授と、千葉大学大学院工学研究院の中田敏是准教授、同大学大学院融合理工学府博士後期課程2年(当時)の福井千海氏らの研究グループは、生きたカイコガの触角を匂いセンサに用いて匂い源を探索する、世界最高性能のバイオハイブリッドドローンを開発しました。匂い追跡の精度と範囲を従来モデルよりも飛躍的に向上させ、5メートル先の匂い源探索に成功したこのドローンは、小型ドローンによる匂い源探索の世界記録を樹立しています。各所から取材が殺到し、国内外で大きな反響を呼んでいる今回の研究について、照月准教授にお話をお聞きしました。あえて一時停止することが匂い源探索の精度を高めた昆虫の匂い源探索行動に着目したバイオハイブリッドドローン09信州大学学術研究院(繊維学系)だい ごてるつき―カイコガの触角を活用したバイオハイブリッドドローンが 匂い源探索の世界新記録を樹立!―照月 大悟准教授進化した次世代型匂い追跡ドローン
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