理 学 科物質循環学コース研究から広がる未来メタン生成菌は CO₂ からメタンを作る微生物であり、CO₂ を削減するために利用できないか研究されています。メタンは都市ガスなどの燃料資源としても利用できることから、微生物を利用した工業的メタン生成への可能性にも繋がります。 また、水圏生態系は漁業や飲料など人間社会と非常に密接に関係していて、水圏生態系の状況を明らかにすることで、現在抱えている諸問題を解決する糸口になります。卒業後の未来像当研究室では、研究計画�野外調査�分析�論文執筆をパッケージとした研究指導を通じて、自らが考えて行動する社会人の育成を目指します。また、研究者として活躍したい学生に対しては、目標実現に向けたサポートを積極的に行います。 31 浦井 暖史 助教信州大学修士課程修了後、民間企業に就職。3年半で退職し、信州大学博士課程に入学。博士号取得後、海洋研究開発機構(学振 PD)を経て 2023 年3月より現職。専門は生物地球化学。当研究室が対象とする環境。メタンは地球深部を中心に様々な環境下で生産されていて、多くの生物が関与しています。メタンを指標として利用することで、様々な生態系を評価することができます。厳冬期の諏訪湖に出現する「釜穴」(2022 年 1 月撮影)。結氷時でも凍ることがないほど、諏訪湖の湖底から大量のメタンが湧き出ています。メタンに関わる生物を中心とした物質循環、特にメタン生成やメタン酸化を担う微生物に関する研究に取り組んでいます。メタン(CH₄)は地球上で最も還元された炭素であり、地球上での生命誕生に深く関わっているとされています。メタンを生成する微生物は「メタン生成菌」と呼ばれており、地球上のメタンの約 7 割を生産しています。一方で、生産されたメタンは「メタン酸化菌」によって利用され、生態系に取り込まれます。こうしたメタン生成やメタン代謝(酸化)のプロセスには多くの微生物が関係しており、メタンを取り巻く生物の役割は非常に重要です。この研究室では、遺伝子解析などの生物学的な手法と、生物が特異的に生産する化合物を対象にした分析化学的な手法を組み合わせた方法を駆使することで、メタンを中心とした生態系での物質循環に関する謎に挑戦しています。生物地球化学研究室メタンを中心とした生態系の解明:生物代謝を分析化学で評価する
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