理学部研究紹介2025
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理 学 科理 学 科研究から広がる未来植物細胞のオルガネラは環境変化に応答してその振る舞いを変えます。例えば細胞に強い光が当たると、葉緑体は強い光を避けるように移動することが知られています。植物が環境ストレスに応答し、細胞が受けるダメージを最小限に抑える仕組みを解き明かし、それを応用することで、過酷な環境でも生育できる作物の作出につながると考えています。卒業後の未来像これまで一緒に研究した学生は、大学院に進学したり、研究から広がる未来本研究室では、現生のヒト(生物種としての人間)とヒト以外の霊長類の行動を注意深く観察し、比較することで、過去の霊長類の行動に関する考察を深めていきます。初期人類がどのように行動し、どのような社会を営んでいたかについて洞察を得るという点で、本研究室の営為は「最古の歴史学」と言えるかもしれません。現生の霊長類の知見を積み重ねることによって、我々人類がどこから来たのかを踏まえ、その上で人類の未来を考えられるようになりたいと思っています。卒業後の未来像大学院進学や環境コンサルタントの会社への就職など、 27シロイヌナズナの根の細胞の蛍光写真。緑は核、マゼンタは細胞壁。一つの根の中にも色々な形の核がある。組織深部の核を観察するために透明化したゼニゴケの無性芽の蛍光写真。シアンは細胞壁、マゼンタは核。ザンティップ(母)と名付け前の子。チンパンジーはヒトに最も遺伝的に近縁な生物種の1つ。子育ての方法はヒトとどのように違うでしょうか?野外環境で温泉を利用することが報告されている霊長類は、ヒト以外ではここ信州�地獄谷野猿公苑のニホンザルだけです。170 万年前の人類の温泉利用について推測する論文が近年発表されており、いま信州は進化人類学的にもホットな調査地です(温泉だけに…)。 しかし植物細胞の中をのぞいてみると、発生段階や環境変化に応じて様々な細胞小器官(オルガネラ)がその形を変化させ、ダイナミックに動き回り、くっついたり離れたりしており、とても動的な細胞を持つことが分かります。当研究室では、モデル植物を実験材料として、光学顕微鏡�電子顕微鏡での観察や分子生物学的、遺伝学的、生化学的手法を駆使して植物細胞内でのオルガネラの振る舞いを理解するために研究を行っています。坂本 勇貴 助教大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究科博士後期課程修了後、東京 理 科 大 学 ポ スド ク 研 究員、大阪大学助教を経て、2024 年より現職。専門は植物細胞生物学、植物生理学。松本 卓也 助教京都大学大学院理学研究科 博士課程単位取得退学後、日本学術振興会特別研究員PD、RPD を経て、2021 年4 月より現職。博士(理学)。専門は進化人類学�霊長類学。植物は動くことができないため、とても静的な生き物だと思われるかもしれません。植物細胞生物学研究室製薬、食品、化粧品メーカーに就職しています。実験生物学で鍛えられる、物事の継続力や論理的思考力は、どのような進路においても卒業生の強みとなるはずです。進化人類学�霊長類学は、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を探る学問です。当研究室では、ヒトを含む霊長類の行動観察(+ゲノム科学、安定同位体分析、非接触バイタルセンシング技術など)によって、霊長類の生態と進化史の解明に挑んでいます。生き物たちの進化の舞台であるフィールドに自身も身を置きながら、「自然が微笑むとき」を待つ、フィールドワークの醍醐味を存分に感じられる研究室にしたいと考えています。進化人類学研究室卒業後の進路は様々です。研究室の目標としては、フィールドで培った発想力と忍耐力(!)、そして研究をまとめるにあたって培われる論理的思考力と文章力を、ぜひ卒業後の未来に生かしてもらいたいと思っています。植物細胞の内部はダイナミック人類進化の謎解きに出かけよう生物学コース生物学コース

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