理 学 科理 学 科研究から広がる未来私がこれまで主な研究対象としてきたかんらん石は、地殻、上部マントル、隕石を構成している主要鉱物の一つです。かんらん石の鉄の酸化数やその変化によって引き起こされる鉱物の構造変化や相変化は、火成岩�マントル物質�隕石が形成した際の酸化還元状態や岩石が経験した環境変化を反映するため、地球規模での物質循環を理解する上で重要です。これまでに地球でどのような物質循環が起こっていたかが明らかになれば、今後の地球の変遷の解明にもつながってきます。 卒業後の未来像地質調査および岩石�鉱物記載を中心とした研究を推奨し、講義で習得した野外調査技術�分析技術の応用能力を身に付けてもらいたいと思っています。大学で培った能力を生かせる職に就けるよう助力するつもりです。研究から広がる未来固体物質中の化学的なデータを用いて、太陽系における過去からの物質進化と現在の地球における物質の循環を明らかにすることで、将来の地球環境変遷の予測につながります。また、新たな分析手法を開発することは、これまで捉えることができなかった原理・原則を明らかにし、地球学だけでなく工学・農学・医学など広範な分野に貢献できます。卒業後の未来像23江島 輝美 助教島根大学で博士課程を修了後、2017 年より現職。博士(理学)。研究分野は、鉱物学、岩石学、資源鉱物学。鈴村 明政 助教京都大学大学院理学研究科 (博士課程)修了。京都大学大学院 人間・環境学研究科特定研究員を経て2025年から現職。専門は地球化学・宇宙化学。玄武岩に捕獲された上部マントルの一部(左図)と石鉄隕石(右図)。黄緑色の粒子は、かんらん石。地表で高温酸化した岩石。隕石に含まれる耐油系最古の岩石のX線合成画像スルメイカに含まれる生物源炭酸塩(平衡石)の光学顕微鏡画像地球の内部の情報を得るためには、地殻変動やマグマへの捕獲などによって、地表付近に運ばれてきた岩石を調べるのが一般的です。しかし、地球内部での岩石の形成環境や捕獲してきたマグマの形成環境を正しく評価するためには、地表付近における岩石�鉱物の変質の影響も考慮する必要があります。そこで、私はこれまで、溶岩�スコリア�上部マントル�隕石を構成する主要鉱物の酸化による構造や相変化について研究を行ってきました。江島 研究室元素や同位体の存在度・分布・変化といった「化学」を用いて、地球内部から表層、太陽系の様々な現象を明らかにすることを「地球化学」と言います。 私は、この地球化学的手法を駆使し、太陽系最初期の環境と物質進化を理解するため、隕石の同位体や微量元素分析を行っています。また、鉱物やガラス中の含水量・水素同位体分析により、地球内部での水の動態の解明を目指しています。さらに、生物が作る鉱物を対象にした安定同位体分析と微量元素分析を活用し、魚類の回遊履歴復元や海域判別も行っています。地球惑星科学に加え、環境学や水産学に貢献する新たな分析システムの開発にも取り組んでいます。鈴村 研究室 本年度からの新しい研究室ですが、地球化学分析を通じて、どのようにデータが出てくるのかを理解して、「正しく」データを取り扱い、結果を解釈できるようになってもらいたいと考えています。主要造岩鉱物の研究隕石から生体鉱物まで地球内部の物質循環の解明適用可能な地球科学分析の開拓地球学コース地球学コース
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