医学科研究紹介2025-2026
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Stella Chemifa Corporation 患者情報の多面的評価に基づく薬物治療の適正化(Naito T. Biol Pharm Bull 2019;42:149-57)頭頸部がん患者におけるセツキシマブ(抗EGFR抗体)のTDM(Shibata K, et al. Cancer Chemother Pharmacol. 2021;87:555-65)蛍光タンパク質で標識した小脳プルキンエ細胞磁気ビーズ企業と共同開発した改良型表面分子構造を持つ培養基材で培養した大脳皮質初代神経細胞シナプス形成因子を固定化した磁気ビーズ上に誘導されたプレシナプス構造 野生型マウスノックアウトマウスシナプス形成因欠損マウスの小脳シナプスの電子顕微鏡像 アクティブソーンタンパク質 Bassoon私たちは、お薬の有効性と安全性を最大限に高め、個々の患者さんに最良の薬物治療を実践するための臨床薬理学研究に取り組んでいます。様々な臨床試験を行い、国から承認されたお薬でも、多くの患者さんに使ってみた場合に、一部の患者さんで、お薬が効かない・効きすぎる、副作用が現れるといった問題を生じることがあります。医療現場の中でお薬を有効かつ安全に使用していくためには、研究活動によって、お薬による効果や副作用が現れる原因を明らかにしながら、お薬に情報を加え、お薬を育てていく必要があります。私たちは、そのような医療現場におけるお薬の患者間での効果や副作用の違いに関する課題に取り組むことによって、合理的な薬物治療法の構築を目指しています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像脳研究と生体材料という2つのフィールドを通じて、医療の未来を切り開くための研究に取り組んでいます。脳研究では、記憶、思考や感情を制御する脳の中の神経細胞同士の繋ぎ目である「シナプス」の形成メカニズムに焦点を当てています。生体材料では、がん治療や再生医療に不可欠で、私たちはその生体応答を解明し、新たな革新的な生体材料の研究開発を進めています。シナプス形成の異常は自閉症などの精神疾患の発症と関わりがあり、この仕組みを理解することは新しい治療法の開発への道を開きます。私たちの研究は、未来の医療に革新をもたらし、多くの人々の生活を向上させることを目指しています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像患 者 さ ん に お け る 医 薬 品 の 効 果 ・ 副 作 用 の 個 人 差 要 因 が 明 ら か に な り ます 。 こ れ ら の 情 報 か ら 、 合 理 的 な 医 薬 品 の 投 与 計 画 法 の 提 案 が 可 能 に な り 、安 心 ・ 安 全 な 薬 物 療 法 の 実 現 に つ な が り ま す 。当教室で学んだ多くの大学院生は、学位取得後に薬剤師または薬学研究者・教育者として活躍しています。また、製薬企業における創薬研究や医薬品開発に携わる職を目指すこともできます。研究を通じて専門的知識、技術的だけでなく、論理的思考や問題解決能力を身につけます。卒業後は、研究者、技術者だけでなく幅広い分野で活躍できます。・ 生 体 試 料 中 薬 物 濃 度 の 高 感 度 迅 速 定 量 法 の 開 発・ ヒ ト に お け る 医 薬 品 の 効 果 ・ 副 作 用 の 個 人 差 の 解 明・ が ん ・ 疼 痛 ・ 感 染 症 等 の 疾 患 や 周 産 期 に お け る 合 理 的 薬 物 治 療 の 構 築・ 非 実 験 的 手 法 を 用 い た 医 薬 品 の 副 作 用 や 薬 物 間 相 互 作 用 の 検 出・ 革 新 的 生 体 材 料 の 開 発 と 安 全 性 評 価・ 神 経 回 路 網 形 成 、 シ ナ プ ス 形 成 の 分 子 機 構 に 関 す る 研 究・ 神 経 発 達 障 害 の 発 病 機 構 に 関 す る 研 究現 代 に お い て も 、 ま だ 治 療 法 が 見 つ か っ て い な い 疾 患 が 数 多 く 存 在 し て いま す 。 脳 の 働 く 仕 組 み に 関 す る 基 本 的 知 見 は 、 将 来 的 に 脳 の 疾 患 を 克 服 する た め の 確 実 な 一 歩 と な り ま す 。 ま た 、 生 体 の メ カ ニ ズ ム か ら 得 ら れ た 知 見を 活 用 し 、 そ れ に 基 づ く 新 し い 材 料 の 創 出 に よ り 、 現 在 は 治 療 が 難 し い 疾患 へ の 新 し い ア プ ロ ー チ が 可 能 に な り ま す 。35臨床薬理学教授 内藤 隆文生体適合システム学教授 植村 健信州大学医学部医学科発行年月:2024年7月 発行:信州大学医学部合理的な薬物治療を提供するための医薬品情報を創出する神経科学と生体材料学 未踏の領域を探求し、疾患の解決策を見つけ出す

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