医学科研究紹介2025-2026
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【子宮内膜症関連卵巣癌マウスモデル】両側卵巣に腫瘍形成(黄点線)あり【LEGHとGASの病理】良性病変LEGHのHE画像(左)、悪性病変GASのHE画像(右)【妊娠初期胎盤絨毛組織のCK7(EVTのマーカー)免疫染色写真】下方が脱落膜を示す。EVTが浸潤している様子がわかる。お互いに切磋琢磨し、新規知見の解明に励んでいます!是非、あなたも仲間になりませんか?【周産期・胎盤班メンバー】チームワークは最高です。【細胞培養を行っている様子】機能解析に欠かせない実験手技である。 【子宮体部漿液性癌担癌マウス実験】SGI-1776(Pim1阻害剤)投与により、マウス移植腫瘍は著明に縮小した(赤線) われわれは、難治性とされる婦人科癌(卵巣明細胞癌OCCC、子宮体部漿液性癌USC、子宮頸部胃型腺癌GAS)における遺伝子・生物学的な解明を目指し、新規治療に向けた研究を行っています。抗癌剤抵抗性とされるOCCCの発症に関連する新たな候補遺伝子を検出し、治療の標的になる可能性があると報告しました。また、ARID1AとPTENのノックアウトにより子宮内膜症関連癌を発症する世界初のマウスモデルを開発し、これを用いて子宮内膜症の発癌過程を解析中です。進行が早く治療抵抗性を示すUSCの予後と相関する癌原遺伝子PIM1に着目し、細胞実験および動物実験にてUSCに対しPim1阻害剤が有効であることを証明しました。予後不良で早期診断困難なGASと、類似する良性病変である分葉状頸管腺過形成(LEGH)について豊富な経験を有し、基礎および臨床研究で世界をリードしています。独自の術前鑑別診断法を確立しており、新規治療の開発に取り組んでいます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像胎盤は母体と胎児をつなぐ器官であり、酸素や栄養分、老廃物の交換をしているだけでなく、ホルモン産生や免疫にも関与し、胎児発育や妊娠維持に作用していますが、その機能は未だに十分には解明されていない神秘の臓器です。母児の健康を著しく損なう妊娠高血圧症候群(HDP)や子宮内胎児発育制限(IUGR)の主要原因として、妊娠初期の胎盤形成時における絨毛外トロフォブラスト(EVT)の子宮内膜・筋層への浸潤不全が注目されています。そこでEVT浸潤を調節する因子に着目し研究を進めています。これまでに鉄イオン運搬に係るLCN2がEVT浸潤を促進することなどを報告してきました。また、胎盤から分泌されるホルモンなどの様々な生理活性物質のうち、NRG1に着目し、胎児肺成熟を促進する因子の検索や、胎盤絨毛の栄養膜細胞の老化が、ヒトにおける約280日の在胎期間を調節している可能性について研究を行っています。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像卵巣子宮内膜症性嚢胞を発生母体とする卵巣癌は特にアジアに多く増加の一途であるにも関わらず、その代表である卵巣明細胞癌は抗癌剤耐性で治療に難渋します。ESCやGASは比較的稀な疾患ですが、確立した治療法が存在せず未だ死亡率が高いです。私達はこれらの発生過程を研究・理解することにより、新しい予防法や治療法の開発に繋げたいと考えています。少しでも多くの難治性癌患者を救いたいと希望を抱いています。大 学 病 院 で 臨 床 医 と し て 研 鑽 し な が ら 、 研 究 を 継 続 し た り 指 導 す る こ と が 出来 ま す 。 ま た 、 米 国 J o h n s H o p k i n s 大 学 な ど へ の 留 学 成 績 も あ り 、 さ ら な る 活躍 を 積 極 的 に 支 援 し て い ま す 。妊 娠 初 期 の E V T 浸 潤 不 全 の メ カ ニ ズ ム 解 明 か ら 、 H D P や I U G R ハ イ リ ス ク 症例 の 選 別 や 予 防 法 の 確 立 に 繋 が る こ と を 期 待 し て い ま す 。 ま た 私 達 の 研 究 成 果か ら 、 新 生 児 予 後 を 大 き く 左 右 す る 早 産 予 知 や 予 防 法 の 確 立 、 さ ら に は 胎 児 肺成 熟 を 促 進 す る 因 子 の 解 明 な ど に よ り 新 生 児 予 後 を 改 善 で き る 可 能 性 が あ り ます 。 こ の よ う な こ と か ら 、 妊 娠 ・ 出 産 が よ り 安 全 な も の に で き る と 期 待 し て い ま す 。大 学 病 院 で 医 師 と し て 研 鑽 し な が ら 研 究 を 続 け る こ と が で き ま す 。 ま た 、 国 内の 他 の 研 究 機 関 ・ 医 療 機 関 へ の 留 学 実 績 も あ り 、 海 外 留 学 も 含 め 積 極 的 に 支援 し て い ま す 。・ 子 宮 内 膜 症 関 連 卵 巣 癌 ( 特 に 明 細 胞 癌 ) の 発 癌 関 連 因 子 の 解 明・ 再 発 ・ 難 治 性 卵 巣 癌 症 例 に 共 通 す る 遺 伝 子 の 網 羅 的 解 析・ 難 治 性 子 宮 体 癌 に 対 し 、 有 効 な 分 子 標 的 薬 ( 抗 P i m 1 、 抗 C y c l i n - A ) の 発 見・ G A S の 発 癌 機 序 の 解 明 お よ び 特 有 の 治 療 法 の 開 発・ E V T の 浸 潤 調 節 に お け る L C N 2 関 連 因 子 の 機 能 の 検 討・ 胎 盤 の 老 化 機 構 に 関 す る 研 究・ 胎 児 肺 成 熟 診 断 マ ー カ ー と し て の 、 母 体 血 中 N R G 1 の 有 用 性 の 研 究・ 妊 娠 高 血 圧 腎 症 に お け る マ ク ロ ラ イ ド 系 抗 菌 薬 の 治 療 効 果 に 関 す る 研 究29婦人科腫瘍 班チーフ:准教授 宮本 強周産期・胎盤 班チーフ:講師 菊地 範彦産科婦人科学産科婦人科学信州大学医学部医学科発行年月:2024年7月 発行:信州大学医学部婦人科難治性癌を治す!胎盤は神秘の臓器

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