頭蓋内電極を留置し(左)、頭蓋内脳波でてんかん発作が始まる焦点を詳細に確認(右)。その後焦点切除術を検討する。迷走神経刺激療法によりてんかん発作抑制を図ることもある(LivaNova HPより改変) 頭蓋内電極てんかん発作を感知して脳刺激を行う刺激装置(responsive neurostimulation (RNS))が海外では使用されている(NeuroPace HPより)低侵襲手術をめざしてロボティックテクノロジーを駆使した、新たな神経内視鏡手術の開発に取り組んでいます。神経内視鏡手術に用いる様々な手術機器 頭蓋内脳波 神経内視鏡手術で脳の深部の観察や手術操作が可能 てんかんとは脳の一部の神経細胞が異常発火し、それが脳の一部あるいは全体に伝播することにより引き起こされる一過性の発作が反復する疾患です。てんかんは乳幼児から成人・老年に至る全年齢層に及ぶ神経疾患で有病率が約1%と言われています。てんかん治療には抗てんかん薬の薬物治療が基本ですが、てんかん患者の約3割は薬剤治療が奏功しない薬剤治療抵抗性てんかんです。コントロール不良な発作により日常生活での制限や、怪我、原因不明の突然死などのリスクがあります。そんなてんかん患者さんの生活と命を守るために“てんかん外科手術”があります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像脳神経外科手術に代表される顕微鏡手術は、大きな皮膚切開や開頭、脳の圧排など、患者への負担が大きな手術になります。この侵襲性を軽減するため、近年、顕微鏡の代わり内視鏡を用いた神経内視鏡手術が急速に普及しました。この神経内視鏡手術は、治療困難であった脳深部(頭蓋底)病変や脳室内病変などを、低侵襲で治療することが可能となる画期的なものです。信州大学脳神経外科の神経内視鏡チームは、脳疾患に対する、神経内視鏡を用いた低侵襲手術の発展をテーマとし、様々な研究に取り組んでいます。 主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像・脳機能やてんかんの解明・てんかんの外科治療・包括的なてんかん診療の構築て ん か ん 外 科 に は 画 像 に は 映 ら な い 脳 の 機 能 、 つ ま り 脳 波 を き ち んと 解 析 す る こ と が 必 要 で す 。 詳 細 な 脳 機 能 解 析 の た め に は 脳 か ら 直 接脳 波 を 調 べ て 解 析 し ま す が 、 こ の 脳 機 能 解 析 が 進 め ば 人 間 の 心 ま で もわ か る 時 代 が 来 る か も し れ ま せ ん 。 脳 波 や 脳 機 能 だ け で な く 、 て ん かん と い う 病 気 も ま だ ま だ わ か ら な い こ と が 多 く 、 今 後 も 臨 床 や 研 究 で 発展 し て い く 分 野 で す 。直接見ることのできない“てんかん”という病気を可視化して手術治療を行うことができるのが脳神経外科医が行うてんかん治療です。てんかんを外科治療で治癒させることが出来た時には感動と大きな喜びを感じることと思います。・ロボティックステクノロジーを駆使した神経内視鏡手術の研究 ・経鼻頭蓋底手術における髄液漏修復法の研究 ・神経内視鏡手術における新規医療機器開発 医療界全体で低侵襲性が重要視される昨今の風潮の中で、脳神経外科手術も侵襲性の大きい開頭手術より、低侵襲の神経内視鏡手術の適応範囲が拡大しています。今後さらに研究が進み、神経内視鏡手術が発展することで、内視鏡内蔵型ロボットの開発、そして近い将来、脳神経外科手術におけるロボティックサージェリー時代の幕開けが訪れると確信しています。 神経内視鏡手術は夢と希望にあふれています。今後間違いなく発展していくであろう神経内視鏡手術分野の研究を通し知識や技術を身につけることで、将来幅広く活躍できると考えています。卒業後の可能性は無限大です。 25てんかん外科 班チーフ:講師 金谷 康平神経内視鏡治療 班チーフ:講師 藤井 雄脳神経外科学脳神経外科学 てんかん外科は、てんかん患者さんの生活と命を守る大切な治療です神経内視鏡を駆使した新たな脳神経外科手術の開発 −低侵襲手術をめざして−
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