医学科研究紹介2025-2026
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5図1. フローサイトメトリー技術によって免疫細胞集団を分別して解析(マウス脾臓のデータ、黄色:好中球、水色:単球、緑色:マクロファージ、桃色:樹状細胞)。図2. 腹膜炎誘導前後の腹腔内より白血球を回収し、セルソーターを使って、マクロファージ(Mac-1およびMac-2)を分取した。分取した各マクロファージから精製したRNAを使って、RNA-seq解析を行った。顔貌上の特徴、先天性多発関節拘縮、巨大皮下血腫などを呈する1人の患者さんとの出会い原因遺伝子CHST14を単離デルマタン4-O-硫酸基転移酵素欠損デルマタン硫酸欠損エーラス・ダンロス症候群筋拘縮型(古庄型)の発見!ヒトで初めて見出されたデルマタン硫酸生合成異常症!県内医療機関から原因不明のID児が多数紹介独自に作成した“IDパネル”による候補遺伝子解析陰性例に対する網羅的遺伝子解析“エクソーム解析”日本で最初の知的障害児専門の遺伝外来“ID外来”! コラーゲン細線維のゆるみが原因!4p-症候群の発症機序を解明細胞遺伝学研究、古典的手法から最先端技術まで! (チーフ:特任教授・高本雅哉)日々健康に生活する上で欠かせないのが、私たちの身体が備える「免疫」というしくみです。免疫はちょうど良い程度に働く必要があります。実際にその反応が弱ければ感染症や癌にかかりやすくなりますし、逆に強すぎてもアレルギーや自己免疫疾患といった病気につながります。私たちの研究室では、免疫の仕組みを理解するため、免疫の働きを担ういろいろな細胞が生まれてくる仕組み、正しく働くための調節の仕組みの研究を行っています。こういう研究は、様々な疾病のより良い予防や治療に繋がる可能性があります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像遺伝医学教室は、附属病院遺伝子医療研究センターとタイアップして、ヒトの遺伝性・先天性疾患を対象とした研究に取り組んでいます。患者さんの症状を丁寧に分析し、次世代シークエンサーなど最新の遺伝子解析技術を用いて原因遺伝子変異を解明します。病気の原因が解明されることにより、これまで難治性といわれてきた遺伝性・先天性疾患の治療法開発につながります。私たちは、患者さんへのよりよい診療・遺伝カウンセリングのあり方に関する研究にも取り組んでいます。こうした包括的な研究を通じて、患者さんが健康的に、安心して暮らせる社会作りに貢献していきます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像Ly6CCD11cF4/80Ly6Gす る 「 シ グ ナ ル 伝 達 分 子 」 の 研 究 。免疫学の基礎をしっかりと身につけ、医療の世界に進んだ後にも、なぜ?どうして?と問い続ける姿勢を身につけた医師を目指してほしいと考えています。な ど の 遺 伝 子 解 析 研 究・ 単 球 ・ マ ク ロ フ ァ ー ジ に 着 目 し た 炎 症 制 御 機 構 の 研 究 。・ 免 疫 細 胞 の 機 能 を 発 揮 さ せ る た め の い ろ い ろ な 信 号 を 細 胞 の 中 で や り と り い ま 免 疫 学 の 世 界 で は 、 が ん や リ ウ マ チ を 代 表 と す る 免 疫 疾 患 の 新 し い 治 療法 が 次 々 と 生 み だ さ れ て い ま す 。 ま た 、 免 疫 系 と 私 た ち の □ や 皮 膚 に 共 生 する 細 菌 と の 相 互 作 用 と 健 康 の 関 係 も 大 き な 話 題 に な っ て い ま す 。 免 疫 の よ り良 い 理 解 は 、 病 気 の 診 断 、 治 療 の 進 歩 だ け で な く 、 人 間 が 健 康 を 保 つ 手 段に も ヒ ン ト を も た ら し て く れ ま す 。・ 遺 伝 性 結 合 組 織 疾 患 の 包 括 的 研 究 、 特 に エ ー ラ ス ダ ン ロ ス 症 候 群 筋 拘 縮 型 ( 古 庄 型 ) ( M u s c u l o c o n t r a c t u r a l E D S -CHST14) の 病 態 解 明 、 治 療 法開 発 研 究・ 知 的 障 害 ・ 自 閉 ス ペ ク ト ラ ム 症 ・ て ん か ん ・ 先 天 異 常 症 候 群 ・ 成 人 神 経 疾 患・ マ イ ク ロ ア レ イ 染 色 体 検 査 、 F I S H 法 を 駆 使 し た 細 胞 遺 伝 学 的 研 究臨 床 遺 伝 学 の 醍 醐 味 は 、 た っ た 1 人 の 患 者 さ ん の 丁 寧 な 分 析 か ら 、 新 た な 疾患 を 発 見 で き る こ と で す 。 遺 伝 子 解 析 に よ り 、 原 因 遺 伝 子 が 解 明 で き れ ば 、病 気 の 成 り 立 ち が わ か り 、 根 治 療 法 を 開 発 で き る と と も に 、 今 ま で 全 く わ か って い な か っ た 生 物 の 普 遍 的 メ カ ニ ズ ム を 説 き 明 か す ブ レ イ ク ス ル ー に な る こ とも あ る の で す 。医 学 部 を 卒 業 後 、 小 児 科 な ど 基 本 領 域 の 専 門 医 を 取 得 し て い た だ き 、 そ の後 、 信 州 大 学 医 学 部 附 属 病 院 を 中 心 に 研 修 を 受 け 、 臨 床 遺 伝 専 門 医 を 取 得し て い た だ き ま す 。 大 学 院 に 入 学 し 、 国 内 外 の 研 究 室 で の 基 礎 研 究 を 勧 め てい ま す 。Mac-1Mac-2RNA-seq analysisMac-1 Mac-2免疫制御学寄生虫感染症学教室准教授 山条 秀樹遺伝医学免疫制御学遺伝子医療研究センター遺伝医学(遺伝子医療研究センターセンター長/教授・古庄 知己センター長/教授・古庄知己)信州大学医学部医学科発行年月:2024年7月 発行:信州大学医学部免疫の仕組みは、どうやって作られ、正しくはたらくのか 先天性疾患の原因遺伝子を探せ!すべては患者さん・ご家族の幸せのために!

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