令和5年度研究開発実施報告書
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V おわりに 〜研究開発の取組を通して,三校園から学校園へ〜 私たちは,子どもたちに内在する『3つのよさ』を共通の視点としながら,附属幼稚園,附属松本小学校,附属松本中学校という,校種を超えた3つの学校が,今回の指定を機に,「附属松本学校園」として幼小中一貫教育の研究を進めてきた。はじめのうちは,各学校の文化や考え方の違いから,互いの取り組みの理解に時間がかかることもあった。しかし,学校園を超えて子供たちの姿を見あったり,子どもの姿から教育観を繰り返し語ったりすることを通して,お互いを理解して,「未来を拓く学校づくり」という大きな目標に向かって,共に歩んでくることができたように思う。その中では,三校園で連携することとはどういうことなのか,何をどうしていけばよいのかなど,答えのない問いに対して,松本学校園の教職員が限りある時間の中で,語りの場をつくりながら研究に取り組んできた。その過程は,まさに試行錯誤の繰り返しであった。 子供たちが「たくましく心豊かな地球市民」として,社会で活躍できるように育ってほしいと願い私たちが互いに協働的に研究を行ってきたことは,私たち自身にとって,大変有意義な時間であったように思う。それは,本学校園で大切にしている子供の主体的な「探究」の営みと同じであった。子供たちが「探究」するように,私たち教師自身も「探究」し続けてきたのである。 実践研究を進めるのにあたって,「『子供から』に徹した実践が確かに子供の資質・能力を耕すことに通じる」ことに手ごたえを感じながら,『子供から』という理念のもと,子供たちのことを信じながら取り組んできた。さらに,一人の教師が自問自答する傍らには,協働して探究する同僚があり,これまでこの研究に関わってきた先生方があり,互いの探究がつながっていくという実感があった。目の前の子供の,「今」に目を向けるだけでなく,その子のこれまでの育ち,これからの未来にまで思いを馳せながら行ってきた授業実践は,私たちのこれからにもかけがえのない財産となっていくと思う。幼小中の職員の間にある,子供を,仲間である同僚の教職員を「信じる」気持ちと実践があったからだと思う。教師が,校種を越え時間を超えて,互いの『思いや願い,問い』に触れ,互いに「観」を揺さぶり合い,信頼に基づく厳しい探究を続けることができたからこそ,この研究は進められたのだと思う。 ある教諭が,「正直,小学校の子供たちの姿を見てできないことややらないことが多くて 気になっていた。しかし,今日,園児の姿を見て,色々できることがたくさんあることを感じ た。小学校の子供たちが『できない』のではなく,できなくさせているのは教師なのかもしれないと思った。」 と語った。 私たちは,この学校園の教育的営みを通して,自分の,同僚のこういった教育観の変容を何度 も目の当たりにしている。『子供から』に徹したり『子供のよさ』に目を向け支えたりするのに徹することは,私たちがもつ教育観を変容させ,子供を信じていくことにつながるのだと実感している。こうした積み重ねが三校園から一つの学校園へと変容させ,子どもたちの未来を拓く学校となっていくに他ならない。

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