令和5年度研究開発実施報告書
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開に位置付けることを心がけてきた。 ≪成果≫ 単独の教科では捉え切れない生徒の『よさ』を把握できるようになったこと,各教科等で育成を目指す資質・能力を明確化できるようになったこと等が考えられる。この要因としては,『3つのよさ』を軸に他教科の教師との議論が活発化したこと,『3つのよさ』と「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」との関係について議論し直したこと等が挙げられる。 ≪課題≫ 本学校で行ったアンケートでは,『3つのよさ』に関する項目は高い水準を維持しているが,「先生は,あなたのよいところを認めてくれていると思いますか(R5 全国学調生徒質問紙回答結果)」について,46.9%(全国平均 39.9%)の生徒が「当てはまる」と回答したのに対し,「自分には,よいところがあると思いますか(R5 全国学調生徒質問紙回答結果)」については 38.5%(37.3%)に留まっている。生徒自身が自分の『よさ』として,さらに自覚できるような支援が必要であると考えている。 ⅱ)教科等横断的な視点を取り入れた意図的・計画的な授業構想や評価の検討 教科等横断的な学びを進めていくために,活用・発揮される教科を厳選し,内容面や資質・能力面での連関を図り授業を構想してきた。以下に示すのが,上記を具現化した実践である。 【事例①】 内容面でのつながりを意識した授業 理科では,「消化酵素の働き」と家庭科の「お弁当作り」の単元を意図的に同時期に行い,理科と家庭科での学習の往還を図りながら,普段何気なく食べている食材への見方を更新する授業を構想した。授業では,家庭科で学習した食品群の3群,4群の食材に着目しながら,より消化が促される食べ物の組み合わせを考察し,実験を重ねていく姿が見られた。そして,「消化酵素の働き」をもとにしながら自分の作ったお弁当を見返す場面では,「鰹節がタンパク質(肉巻き)の消化を助けること」「ブロッコリーがデンプン(ご飯)の消化を助けること」を見いだし,「身の周りの食材には,消化酵素が含まれている食材が多くあるし,それらの働きを知ることで,より良い生活ができる」ことに気付く姿が見られた。また,内容面で理科と家庭科をつなげた授業が,理科の資質・能力を育むことにとどまらず,得た学びを生かして,「将来,健康に過ごしていきたい」と新たな価値を創出していく姿につながった。 【事例②】 資質・能力面でのつながりを意識した授業 総合的な学習の時間では,「鯛萬の井戸でイベントを行うことで,地域の人を笑顔にするとともに,多くの人と人を繋げ井戸に集う人を多くしていきたい」という生徒の願いに基づき,「鯛萬の井戸~人と人が繋がる夏祭りプロジェクト~」という単元を構想した。単元をデザインしていく際に教師は,本単元で主に活用・発揮される他教科の資質・能力を精選し,本単元で育みたい資質・能力を明確にすることで,生徒の学びの姿を具体的に捉えるとともに,生徒の探究的な学びを支えていこうとした。授業では,警備員を配置する場所,屋台を配置する場所等を決定していく際,地理的な情報や仲間や井戸に関わる方々の思いを加味し,社会科地理的分野で育まれた資質・能力を活用・発揮させて,多面的・多角的に考察し,合理的に配置図を作成していく生徒の姿が見られた。さらに,教師が学びの姿を肯定的に捉え共に探究的な学びを重ねていくことで,単元終末には,生徒自身が探究する意義や価値を見いだしていくことにつながった。

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