令和5年度研究開発実施報告書
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【事例④】単元名:何がこの曲を形づくっているのかな~聴いて感じて表現しよう~ 1年次から授業の導入に行なっているボディーパーカッションでは,音楽に合わせて映像の動きを真似して楽しそうに身体を叩いている J 児。全校で校歌を歌う時にも,必ずと言っていいほど指揮をしながら歌っている。「拍」や「リズム」を感じている姿だった。 2年次5月に,一曲の中で「速度」と「強弱」が少しずつ変化する『山の魔王の宮殿』を鑑賞した。曲を聴いて,感じ取ったことや聴き取ったことを身体を動かして表現した。J 児は,「強弱」が弱い部分から始まる冒頭部では,大きな動きはせずに,メロディーのリズムに合わせて手で床を叩いて曲を感じていた。曲が進むうちにだんだん強くだんだん速くなってくると,頭をブンブン振り,体全体を振り,首を振り,体全体で曲から聞き取ったことを表現していた姿だった。終わりの部分では,場面の変わり目を聞き取り,初めて聴いたときは動きがピタッと止まった。それまでの同じメロディが繰り返しされている部分との違いを聞き取ったのだろう。2回目3回目と回を重ねて聴くと,それまでと動きが変わった。音楽を聴けば聴くほど,今までに聞こえてこなかった音を聴き取ることができ,動きの変化になっていたのだろう。「速度」と「強弱」の変化を聴き取り,音楽に合わせて身体で表現していた。 11月に『水族館』を鑑賞した時には,自分たちの想像する明るくて楽しい水族館とは違う印象を持っていた。「暗い夜の水族館」や「人気のない水族館」と考えた人が多くいた。その理由として,「速度」と「強弱」の他にも「楽器の音色」や「音の高さ」「音楽の明るさ暗さ」に着目していた。「ピアノの高い音が聴こえる」「暗いところだけじゃなくて,明るいところも少しある」など聴き取っていた。J 児は,音楽に合わせて身体を動かす時に,「暗いところは深海の感じがしたから,プランクトンになった」「明るいところは浅瀬の感じがしたからカツオのエボシになった」と,自分の動きを音楽から具体的に考えていた。確かに暗い時には,床にお腹をつけて泳いでいる姿があり,明るい時には,立ち上がり両手をひらひらさせながらクラゲのようになって泳いでいる姿があった。 5月には,曲を聴いて感じた印象や,「速度」と「強弱」の変化に合わせて身体を動かす姿を多く見たが,11月には「楽器の音色」や「音の高さ」,「音楽の明るさ暗さ」も聴き取れるようになり,身体を動かした理由をより音楽的な見方で捉えることができ,明確になっていた。曲の雰囲気だけでなく,音楽を形づくっている要素を元に,楽曲を味わっている姿を多く見るようになった。 (3)小学校~【領域の教科化】教科における子供の対象との関わり~ 【事例①】単元名:「こだわりスプーンをつくろう!」 【小5 技術科】 小学校5年生では,単元「こだわりスプーンをつくろう!」において,小学校に入学してから初めての宿泊学習となる美ヶ原キャンプで使うスプーンの製作を行った。普段使っているスプーンや,実際に手彫りでつくられたスプーンの見本を見ながらイメージを膨らませ,それぞれが「こんなスプーンにしたい」という願いをもち,それに沿って工程や道具を選択しながら製作を進めていった。 Y児は,「スプーンの曲線がきれいに出るようにつくっていきたい」という願いをもって製作に取り組んだ。多くの児童が木材を削り出すために小刀やのこぎりを使っていく中で,Y児は彫刻刀の丸刀を使い,スプーンの曲線や「つぼ」の裏側を丁寧に彫り進めていった。時折,周囲の友達が小刀やのこぎりを使って製作を進める様子を見たり,友達同士のやり取りを聞いたりしながら取り組んでいた。しかし,だからといって他の道具を使うことはあまりなく,ほとんどの工【2年ひょうげん領域】

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