令和5年度研究開発実施報告書
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幼稚園で子供が遊ぶ中で『3つのよさ』が自然と見られることで,小学校以降においても主体的に学び続ける姿につながっていくと考える。この3つの姿が自然と発揮されるように,子供たちの遊びを支えていくことで,幼稚園・小学校・中学校で一貫して目指す「たくましく心豊かな地球市民」に向かっていくはずである。幼稚園ではこれからも,子供たちの「やりたい」や対象との関わりの中で見られる育ちに寄り添いながら援助を考え,子供たちの遊びを支えていく。 (2)小学校~【遊びの領域化】領域と教科の接続のタイミング~ (2)小学校~【遊びの領域化】領域と教科の接続のタイミング~ 【事例①】【ことば領域から国語科へ】~国語科の文学的文章との関わり方の変化を通して~ 1年生の「おおきなかぶ」や2年生の「スイミー」では,動作化やペープサートによって登場人物になりきり,お話の世界に入り込んでいく姿も見られた。例えば,2年生の「スイミー」の学習では,「ぼくが目になろう」という「スイミー」のセリフをまるでヒーローになったかのように演じながら読んだり,教室の中に様々な色のビニールテープを使ってサンゴが海中で漂う様子を再現したりした。「スイミー」という物語の世界の一員となることで,物語の世界観を楽しんだ。2年生後半の「スーホの白い馬」の学習では,最初と最後の場面における挿絵の比較から「美しい音ってどんな音だろう」という問いが生まれ,追究が始まった。「白馬は,本当はいないんだけど,スーホと心がつながっているんだよ。だから,ますますうつくしくひびくんだよ。」「スーホは,一人で演奏しているんじゃないんだよ。白馬と二人で演奏してるんだよ。だから,ただ『美しくひびく』じゃなくて,『ますます,美しくひびく』なんだよ。美しい音は,スーホと白馬の二人だから出せる音だと思う」と,まるで自分が村人の一人になったかのように最後の場面におけるスーホの奏でる馬頭琴の音色の美しさについて語ったM児。 1,2年生の特徴として,お話の(叙述が表現している)世界を,対象である言葉のみならず,挿絵,音読,役割読み,動作化,ペープサート等による理解補助を得て読んだり,お話の登場人物になりきり,あるいは同じ世界を共有し,共感しながら読み進めたりする点があげられる。 3年生の「ちいちゃんのかげおくり」の学習では,お話を第三者の視点(読者目線)で読むことへの気付きが見られた。Y 児は,文中における「お花ばたけ」の言葉から「ちいちゃんは自分が死んでしまったことに気付いてないから嬉しそうだけど,読んでいるぼくたちはお話を知っていて,ちいちゃんが死んでしまったことを知っている。だからすごく悲しいお話だと感じる」と語った。2年生までのように登場人物になりきって読むとハッピーエンドになるはずなのに,読後に悲しみや切なさを感じる自分に違和感を持つことが,読解の起点となり,違和感の原因が,自分自身が第三者の目線でちいちゃんに起こる出来事を読み進めていることに気付いた。 3年生の特徴として,お話の世界を俯瞰して捉えることができる点があげられる。読者目線で読むからこそ読み進められる3年生後半の「モチモチの木」における「豆太の成長を見守る自分」「豆太の成長を支える深い人間愛」に触れる読み方や4年生「ごんぎつね」における「ごんと兵十のわかり合うことのない,わかり合えたときは,兵十自らの手によってごんが命を落とす,取り返しのつかないときだった」という,二人の登場人物の心情の変化の関わりを物語の世界を俯瞰しながら読む読み方等に繋がっていくと考える。 よって,お話の世界に入り込み,対象である言葉以外の情報によって理解を深めながら,登場人物になりきって読む1・2年生,お話の世界を俯瞰で捉え,登場人物の心情の変化 を捉えて主題に迫っていく3年生以上,との捉えから,国語科の文学的文章読解から見える領域と教科の境目は,2年生と3年生の間と言える。

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