K児の遊ぶ様子から,K児の「やりたい」を捉えることはもちろんのこと,素材や道具をどのように使い,友だちとどう関わって遊んでいるのかという,対象(もの・ひと)との関わりの中で見られる育ちも考え合わせて援助してきたことが,【事例②】のK児の姿につながったと考える。その子の「やりたい」と,対象との関わりの中で見られる育ちとを捉えていくことで,次の遊びが予想しやすくなり,よりK児の発達段階に応じた援助ができるようになったのではないかと感じた。 一人一人の「やりたい」に加え,対象との関わりの中で見られる育ちを視点として,その子供に合った環境の構成や直接的な援助を考えることは,その子供が自ら遊びを広げたり深めたりしていくための重要な手立てとなる。 ⅲ)子供の理解を深め,教師のあり様について考えるカンファレンスの重要性 ⅰ,ⅱで述べたように,一人の子供の遊ぶ姿とその内面を捉えようとする時に,担任の見方,考え方だけではなく,カンファレンスを通じて複数の教師の多様な見方,考え方が自由に語られることを大切にしてきた。共にカンファレンスを行う同僚から,自分一人では気付かなかった子供の姿や子供の内面の捉え方があることに気付かされることがしばしばあった。そして,「私たちのクラスで遊んでいた時はこんな様子だったよ」「〇〇さんはこんな楽しさを感じていたんじゃないかな」というように,子供理解を深めることにつながり,次の保育に生きてくることが実感できた。 また,カンファレンスでは,「子供の感じている“楽しさ”や,“おもしろさ”,“心地よさ”などを理解するためには,教師も子供たちと同じように遊んでいくことも大切なのではないか」「遊びの中で,教師も子供と一緒に環境を再構成していくことも大切なのではないか」と,教師としての子供の遊びへの関わり方についても考え直すことにつながり,そのような教師の援助についての手応えも感じている。 カンファレンスは,一人の子供を多面的・多角的に捉えるための有効な手段となった。それと同時に,教師自身の子供の遊ぶ姿を見つめる視点を広げることとなり,子供の「やりたい」をどのように捉えていったらよいのか,教師としてどのようにあるべきか,どういった援助が有効なのかについても考えることにつながったと感じる。 ⅳ)子供が遊びにうちこむ姿に見られる『3つのよさ』 遊びにうちこんでいる子供には『3つのよさ』がいたるところで発揮されている様子を見ることができる。 【事例②】では,素材の色から特定の食べ物を想起し,色を選んだり,毛糸を切ったり,お花紙をちぎって大きさを変えたりしながら,サラダを作っていくK児の姿が見られた。また,お客さん用の机に座っている友だちを見つけると,自分から注文を取りに行く姿も見られた。このようなK児が遊んでいる様子を,『3つのよさ』を視点に見ると,次のように考えられる。 ・自己表現している姿:お花紙の様々な色から食材をイメージしてサラダを作る姿 ・課題探究している姿:お花紙や毛糸などの種類,大きさや色を選びながらサラダを作る姿 ・社会参画している姿:近くにいる友だちを見つけ,自分から注文を取りに行く姿
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