ⅱ)対象との関わりの中で見られる育ちを捉える必要性 ➀ジュース屋さんごっこをして遊んでいるK児の遊ぶ様子から育ちを捉え,次の遊びを予想し,援助を考える教師 <K児が遊ぶ様子> ジュース屋さんごっこを楽しんでいたK児は,友だちの注文に合わせてお花紙の色を選んだり,それをちぎって大きさを変えたりしてジュースを作っていた。その作ったジュースを友だちに渡し,その子がジュースを飲む様子をじっと見ている姿もあった。 このようなK児の遊びの様子から担任は,“T児はきっと注文に合わせたジュースを作り,友だちに飲んでもらいたいのだな”と捉えた。 担任と副担任のカンファレンスの中で,K児が最近「バナナ」と言う友だちの注文に合わせて黄色のお花紙を選んでちぎっていたことから,以前のK児には見られなかった,イメージに合う素材や色を選んで大きさを変えるという育ちが,ものとの関わりの中で見られ始めていると捉えた。そこから,さらに様々な種類の食べ物のイメージに合う素材を選び,大きさを変えながら料理を作っていくだろうと予想し,お花紙の色を増やしたり,スズランテープや毛糸など,素材の種類を増やしたりしてはどうかと考え,環境の再構成を行った。 また,今までは自分のジュースを作って楽しんでいたK児が,最近では,作ったジュースを自分から友だちに渡すような姿も見られ,人と関わる中で,これまでとは違った育ちも見られ始めていると捉えた。そこから,さらに友だちとの関わりを広げていくのではないかと予想し,友だちと一緒に料理ができるようにキッチンを広くしたり,机にテーブルクロスを敷いて友だちと作った料理を食べるスペースを作ったりしてはどうかと考え,環境の再構成を行った。 ②【事例②】友だちの中でサラダを作るK児の姿から(年中4歳児 料理作り遊び) K児は,キッチンにある黄色い毛糸を見つけるとしばらく見てから,手を伸ばした。10 センチほどの長さに毛糸を1本切ると近くにあった皿にのせた。その後,4本続けて毛糸を切って,皿にのせると,お花紙の方に視線を移した。黄色のお花紙を1枚つまむと机に置き,続けて黄緑,ピンクも同じようにつまんで机に置いた。「ハムおいしそう」と言いながら,ピンクのお花紙を手に取り,小さくちぎり,一つずつ皿にのせていった。続けて,黄色,黄緑色の順番で同じように小さくちぎって皿にのせた(ア)。 その後,顔を上げ,右手を挙げると「Kちゃんのサラダ完成」と言い,手で食べるまねをした。 サラダを食べ終わり,周りを見るとお客さん用の机に座っている友だちを見つけ,すぐに伝票を手に取り,「注文はなんですか」と聞きに行った(イ)。 ③K児の「やりたい」に加え,対象との関わりの中で見られる育ちに目を向ける必要性 カンファレンスで話し合い,素材や道具を徐々に増やしたことで,アの場面のようにK児が注文に合わせて,素材を切ったりちぎったりして使い方を試しながら作りたいものを作って遊んでいく姿が見られた。また,キッチンを広くし,お客さん用のテーブルを用意したことで,イの場面のように友だちとの関わりが少しずつ増え,友だちからの注文を聞きに行く姿も見られた。 〈お花紙をちぎってサラダを作るK児〉
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