幼稚園では,教育目標「遊びにうちこむ子供」を育むために,子供の遊ぶ様子から,その子供の「やりたい」と,対象との関わりの中で見られる育ちの両面を見つめ,次の遊びを予想することで,よりその子供に合った援助について考えてきた。また,子供の様子について多面的・多角的に話し合うために,複数の教師で多様な見方,考え方を自由に語り合うカンファレンスを行ってきた。 子供が自ら遊びを広げたり,深めたりする中で見えてきた成果を事例とともに次に示す。 ⅰ)「やりたい」を捉えようと子供の内面に目を向けることで見えてくる援助の具体性 ➀【事例➀】粘土をこねて食べ物に見立てるT児の姿から(年少3歳児 料理作り遊び) T児は,バットの上に並べていた3つの粘土を全て手に取り,炊飯器のおかまに入れると,中でこねたり,型抜きを使って模様をつけたりした(ア)。その粘土を取り出し「もちもち!」と笑顔で言いながら先生に見せた(イ)。粘土をキッチンへ持っていきフライパンの上に乗せ,前後に動かした。 ②T児の遊ぶ様子から「やりたい」を捉えようと話し合う教師 【事例➀】で,T児がはじめに小麦粉粘土のかたまり3つをおかまに入れて,その中でこね始めた姿から,担任は“T児はいっぱいの粘土をこねたいと思っていたのではないか”と捉えていた。 その捉えに対し,カンファレンスで「T児はなぜ“こねたい”と思ったのか」「そう思った根拠は何か」「こねていたのは手のひらか指先か。押していたのかつまんでいたのか」など,T児が遊んでいた時の詳しい様子について話題にあがった。担任がT児の様子を「アの場面では,両手で上から粘土を押したり,指先でつまむようにこねたりしていた」「イの場面のように,『もちもち!』と笑顔で担任に見せていた」と詳しく語るにつれ,“粘土を触ったときの感触がもちもちしていて気持ちよい,もっとこねたい”という,T児が感じている“心地よさ”に目を向けることができ,T児の「やりたい」をより細やかに捉えることにつながった。 このようにT児の「やりたい」を捉え直した担任は,粘土の感触の心地よさを十分に感じることができるように,水加減を調節してより柔らかい粘土を用意するという環境の再構成を行った。 ③捉え直した「やりたい」をもとに援助を行うことで,より遊びを広げていくT児の姿 T児の「やりたい」を担任が捉え直し,環境の再構成を行うと,その後のT児の遊びの中で,粘土を手でこねて感触の心地よさを感じることに加え,粘土にいろいろな模様を付けて楽しむ姿も見られた。 このように,保育をする中で,T児が発する言葉だけでなく仕草や表情など,細かな姿に着目することで,その子供の感じている“楽しさ”“おもしろさ”“心地よさ”などの内面を探り,T児の「やりたい」をより深く捉えることにつながった。また,内面を探り「やりたい」を深く捉えることで,感触を楽しんでいけるように粘土をより柔らかくするといった,よりその子供に合った援助の方向性が見えてくるようにもなった。 子供の「やりたい」を捉えていく時に,目に見えている子供の姿だけではなく,子供の仕草や表情,視線の先,発語などを細やかに捉え,その遊びで感じている“楽しさ”“おもしろさ”“心地よさ”などの内面を捉えることで,その遊びを支えるための援助にいかしていくことができる。 2 本学校園の事例と成果ああアあああああああああああああああああああああああ(1)幼稚園~【遊び】遊びにうちこむ子供を支える~ 〈3つの粘土をおかまに入れ,手でこねるT児〉
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