(2)『学びの総合化』における各校園や段階での取組~実施した指導方法等の特徴~ ①幼稚園 ~自分の「やりたい」という思いをもって主体的に対象に関わる【遊び】 幼稚園では,遊びこんでいる子供には内在する『3つのよさ』が自然と見られているという教師間の共通認識のもと,教育目標である「遊びにうちこむ子供」を育もうと,子供たちの遊びを支えている。そのために,私たちは子供の遊ぶ様子から,“こんなふうに遊んでいきたい”という,遊びに向かう原動力となる「やりたい」という思いと,対象との関わりの中で見られる育ちの両面を見つめ,次の遊びを予想することで,よりその子供に合った援助について考えてきた。援助の具体性が高まることで,子供は一層その遊びを広げたり深めたりしていく。子供が主体的に対象に関わり,それを広げたり深めたりしていくことを,私たちは幼小中の連続する 12 年間の学びの萌芽として考えている。 ②小学校低学年 ~その子らしく対象と関わる【遊びの領域化】~ 小学校低学年では,遊びの中に学びがあると考えている。そして幼稚園で遊びにうちこんできたからこそのその子らしい対象との関わり方を支えるために,「ことば」「かがく」「くらし」「ひょうげん」の4つの領域を設定した。 子供が「自分の探究課題」から始まる活動中のその子らしい対象との関わり方を受容できるように,事象を多面的に捉え,子供の発達に応じた探究を保障したいと考えている。そして,『3つのよさ』を視点に,子供のよさを検討し続けている。子供の発達段階,習熟度,経験値を考慮し,その子らしい探究が保障されるよう,教師はその子の何を捉えて,どう評価し,どう判断し,どう動くかといった教師の思考・判断についての検討を,学年・教科等の枠を超えて重ねていく。そこでは,子供がどのような学びをしてきたか(過去),そしてその子供は何と対話しているか(現在),さらにはその子供はこの先どうあるか(未来)を連続的に捉えることを試みている。45 分でのねらいに固執して教師の思考・判断があるのではなく,単元全体を俯瞰して捉える中での教師の思考・判断を大切にしている。 ③小学校高学年 ~各教科の見方・考え方を活用して探究していく【領域の教科化】~ 小学校高学年では,低学年時の特徴に加え,もっと詳しく知りたいと願い,より各教科の見方・考え方を求めるようになっていく。そして,子供はさらに対象への認識を深めていく.そのような子供に対して,教師は,それまでに獲得した素朴でバラバラな概念を,束ねたり深めたりしながら探究的に学べるよう,領域から教科に接続し,単元や授業をデザインしている。 実際,子供は,これまでの経験によって積み上げられた具体物を用いた学びから,目では捉えにくい抽象度の高い学びに対して興味関心を抱いている。しかし,子供の「思いや願い,問い」を受け止めるだけでは,伝達すべき文化遺産としての先人たちの知恵や技術等の継承・発達に偏りが出てくることもある。そこで私たちは,教科の内容と子供の理解の仕方を意味付けする教師の専門性を磨き,子供の『よさ』の発揮と,教師の目標を関連付けながら単元デザインの作成を行っている。教師は,身の回りの経験では得られない新たな世界を開拓していけるような場を位置付けている。 ④中学校 ~自己の学びを自覚的に把握しながら探究を深めていく【教科等の総合化】~ 12 年間の最終段階である中学校では,社会の入口に立つ中学生が,内在している『よさ』を軸に,各教科で学び,身に付けてきた資質・能力などを総合的に活用・発揮し,自己の学びを自覚的に把握しながら,生きた現実に対峙することができる地球市民に育ってほしいと考えている。 子供たちは教科の学びを深めていけばいくほど,その教科の枠だけでは解決できない問題に直面する場面が多く生じてくる。その際,身に付けてきた資質・能力を総動員したり,友
元のページ ../index.html#27