令和5年度研究開発実施報告書
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いる。 教育課程の編成や単元や授業をデザインする際には,子供の『3つのよさ』の顕在化を支えるために,子供自身が自分の問題解決の手腕・能力・やり口を,自分の意志と判断に基づき,自分で十分にコンロールできる場や時間を保証しようとしてきた。また,『3つのよさ』を拡充するために,子供が,自身の学びを知識・技能の獲得にとどめることなく,それらを初めて出会う問題解決場面で効果的に活用する思考力・判断力・表現力等,汎用性のある認知スキルまでに高め,さらに粘り強く問題解決に取り組む意志力や感情の自己調整能力,直面する対人関係的困難を乗り越える社会的スキルの育成にまで広めることを目指してきた。そのようにすることで,子供は自分の強みを生かし,資質・能力の他の要素を巻き込みながら学び,問題解決の手順や方法を自覚し,整理し,どの状況で使えるか判断しながら,より質の高い問題解決を行うことができるようにもなってきている。従って,そのような学習状況の評価に当たっては,資質・能力の「三つの柱」(「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」「学びに向かう力,人間性等の涵養」)に基づいている。その上で,子供の「思いや願い,問い」に基づく学習を構想するために,その時々の子供の状況を『3つのよさ』を視点に捉え単元構想するという実践を行っている。 ③子供側の視点に立った探究的な学びのデザイン ア 子供の「思いや願い,問い」を大切にした学び 本学校園の子供たちは,「思いや願い,問い」を強くもっている。これまでの教育実践の中でも,「子供が,やりたいことにひたすらうちこめる遊びとは」「願いや問いはどこにあり,子供自らが主体的に探究できる学びとは」と,目の前にいる子供に対して,教師は何ができるのだろうかという立場で,子供の「思いや願い,問い」に応じて活動を立ち上げることを大切にしてきた。『3つのよさ』を発揮するような状況のために,これまで本学校園において暗黙の了解であった子供の「思いや願い,問い」に教師がより目を凝らし,大切にすることが必要である。 イ 探究的な学びの捉え 本学校園における探究的な学びとは,教師が定めた目標に子供全員が到達するように,教師が子供を導くものではなく,一方で自分の「思いや願い,問い」に向かって進む子供を,教師が後から追いかける放任でもない。子供と教師が共にその教材を通して学んでいく先にある,新たな自分を予感したり,期待したりしながら,自分の「思いや願い,問い」から,体験や対話などを繰り返しながら自ら進み,その先に自分の予感や期待を学びとして構成していくものなのではないかという認識を,職員間で共有しつつある。探究的な学びとは,子供と教師が同じ方向を並び見ながら進む中に生まれるものであると考えている。 ウ 探究的な学びのデザイン 私たちは上記のような探究的な学びをデザインする際,次の2つの視点を大切に環境設定の工夫や教材研究を重ねている。 1 つ目は「その環境や教材を通した遊びや学びが,子供の一人ひとりの在り方や生き方につながるか」という視点である。それはつまり,「環境や教材との出会い」の場面で,その環境や教材と,子供の生活や世界との接点を,子供自身が予感することができるかどうかということである。環境や教材を通して自分の生活や世界の見え方が変わってくるという予感が,子供の「思いや願い,問い」を生み,それが子供の主体的な探究のエネルギーになると考えている。 また,出会いの場面で子供に生まれた「思いや願い,問い」が,その先にどんな「学びを味わう」場面へつながるかを見つめることを大切にしている。それは,その遊びや学びを通してど

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