とが考えられる。 ③領域から教科へ接続するタイミングの妥当性 昨年度までの研究から、「ことば」「かがく」領域について、領域から教科への接続のタイミングは、小学校3年生になるときであることが示唆された。今年度、「くらし」「ひょうげん」領域についても、同様に3年生から教科へ接続することが適切であると示唆された。それは、下記事例にあるように、3年生に近づくにつれて、子供の学び方は、教科のように細分化された、より専門的な見方・考え方を働かせながら目の前の事象を捉えていくことが見えてきたからである。 【事例①】単元名「藍染」(3年生 くらし領域) ~社会的な見方・考え方を働かせ、人・ものの捉えを広げる子供たち~ 3年生では、昨年に引き続き藍を育てた。今年度は昨年度よりも綺麗な藍色を出したいという願いをもち、藍と関わっていた。その中で出合ったのが「型染」であった。この技法はクラスでお世話になっている藍染職人の浜完治さんが藍染を行う際の技法である。 子供たちは自分たちに藍を育てるきっかけをくれた浜さんのことを考えていく中で、日本での藍染の歴史が 1500 年続いていることや浜さんが 50 年以上藍の型染を続けていることを知った。藍染が多くの人によって受け継がれており、浜さんに受け継がれ、その「藍のバトン」を自分たちが浜さんから受け取ろうとしているのだということにも気が付いていった。 3年生では、「浜さん」という人を2年生の時と同様、「自分たちに協力してくれる優しい人」という捉えを基盤としながらも、藍染の技術や思いに触れてきたことで「浜さん」という人を「藍染職人としての浜さん」として出会い直してきたように思う。また、子供たちが育ててきた「藍」も植物としてだけでなく、歴史や文化的な視点も含めて「藍」のことを考えていると言えるだろう。子供たちは「去年よりも綺麗な藍色を出したい」と願った時、「浜さん」や「藍」を空間や時間、相互関係に着目する等して考えたことで、2年生の時よりも多面的に目の前の事象を捉え、自分たちの願いの実現のために動いてきたと考える。 このように、3年生においては、2年生のときと比べて、より社会的な見方で「浜さん」や「藍」を捉えなおしていく姿が見られた。 【事例②】単元名「何がこの曲を形づくっているのかな~聴いて感じて表現しよう」 (2年生 ひょうげん領域) 2年生の5月、一曲の中で「速度」と「強弱」が少しずつ変化する、グリーグ作『山の魔王の宮殿』の鑑賞の授業をした。子供たちは、曲を聴いて、感じ取ったことや聴き取ったことを、身体を動かして表現した。中でも J 児は、「強弱」が弱い部分から始まる冒頭部で、大きな動きはせずに、メロディーのリズムに合わせて手で床を叩いて曲を感じていた。曲が進み、曲調がだんだんと激しくなってくると、合わせて J 児の動きは頭を強く振ったり、首を大きく振ったりして、体全体で曲から聴きとったことを表現するようになっていった。 11 月、『水族館』の鑑賞の授業で、J 児は、「ピアノの高い音が聴こえる」「暗いところだけじゃなくて、明るいところも少しある」と、気づきを述べた。そして、「暗いところは深海の感じがしたから、プランクトンになった」「明るいところは浅瀬の感じがしたからカツオのエボシになった」と、暗い時には、床にお腹をつけて泳ぎ、明るい時には、立ち上がり両手をひらひらさせながらクラゲのようになって泳いでいた。 5月の鑑賞の学習では、曲を聴いて感じた印象や、「速度」と「強弱」の変化に合わせて身体を動かす姿を多く見たが、11月では「楽器の音色」や「音の高さ」、「音楽の明るさ、暗さ」も聴き取れるようになった。子供たちは、曲の雰囲気だけでなく、音楽を形づくっている要素を元に楽曲を味わうといった、より音楽的な見方で曲調を捉えることができるようになっていったと考えられる。 ④教職員への効果 小学校のある教師が、幼稚園の保育を参観し、研究会で「正直、小学校の子供たちの姿を見て、できないことややらないことが多くて気になっていた。しかし、今日、園児の姿を見て、色々できることがたくさんあることを知った。小学校の子供たちが『できない』のではなく、できなくさせているのは教師なのかもしれないと思った。」と語った。 本学校園に赴任し、子供たちに出会ったとき、「教師がやらせようとすることをやらない」と
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