環境報告書2025
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2025年9月てない危機的状況に直面しています。人類の活動が地球システムの安定性を揺るがす中、持続可能性を超えて、地球を再生するというマインドが求められる時代に突入しました。このような時代だからこそ、信州大学の存在意義が、真に問われていると感じます。信州大学は、その存立の理念として次の5つを掲げています。・信州の豊かな自然、その歴史と文化、人々の営みを大切にします。・その知的資産と活動を通じて、自然環境の保全、人々の福祉向上、産業の育成と活性化に奉仕します。・世界の多様な文化・思想の交わるところであり、それらを理解し受け入れ、共に生きる若者を育てます。・自立した個性を大切にします。・ここで学び、研究する我々は、その成果を人々の幸福に役立て、人々を傷つけるためには使いません。この理念は、信州大学が長年にわたって地域とともに歩む中で育んできた、大学の存在意義と価値観に根差した“心意気”とも呼べる精神であり、教育・研究・社会貢献のあらゆる営みを支える基盤となっているものです。これは「信大フィロソフィー」と呼べるものであり、その中心には、地球と地域社会のウェルビーイング、そしてサステナブルな未来への責任が据えられています。私たちは「壊れゆく地球を元に戻す」ことを、大学の使命として位置づけています。この信大フィロソフィーに基づき、本学は2023年度、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択されました。J-PEAKSは、大学ファンドによる国際卓越研究大学と並ぶ我が国の研究大学強化政策の柱であり、信州大学が地域とともに築いてきた実績と、地球規模課題への挑戦姿勢が高く評価されたものです。本学が提案した事業の中核をなすアクア・リジェネレーション(ARG)分野の研究は、本学の環境戦略の中心を成しています。水資源の浄化・再利用、グリーン水素の創出、光触媒とメタネーションを融合した人工光合成の開発などは、気候変動やエネルギー問題の解決に直結する取り組みであり、信大フィロソフィーの実践にほかなりません。あわせて本学は、全国に先駆けて環境マネジメントシステム(ISO14001)を導入し、「環境に負荷を与えることのない大学」の実現に向けて、継続的な改善を進めてきました。再生可能エネルギーの導入、廃棄物の削減、環境教育の推進などの取り組みは、環境にやさしい大学ランキング『UI Green Metric World University Rankings』においても高く評価されています。私たちの挑戦は、これにとどまりません。いま求められているのは、削減から再生へ、対処から共創へという意識の転換です。信州大学は、地球を再生する心意気をすべての構成員と共有し、未来の世代にとって希望ある知的基盤を築いてまいります。教職員、学生、そして地域の皆さまとともに、持続可能で調和に満ちた未来に向けて、一歩ずつ着実に進んでいきましょう。皆さまのご理解とご協力に、心より感謝申し上げます。20世紀後半以降、急激な人口増加と経済活動の拡大は、地球環境に深刻な影響を及ぼしてきました。気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇など、私たちはいま、「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」を超えかねない、かつ 信州大学長中村 宗一郎11信大フィロソフィー×J-PEAKS〜地域から託された夢を地球の未来へとつなぐ〜

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