統合報告書2025
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自主財源確保策の一つとして、東洋計器株式会社と本学がネーミングライツ契約を締結。左から、中村宗一郎 学長、東洋計器株式会社 土田泰正 代表取締役社長、杉本光公 全学教育センター長このような財政的難局に対し、私たちは自己収入の増加に多角的に取り組んでいます。企業との共同研究の拡大、競争的資金の獲得、土地貸付による収入確保に加え、令和6年度からはネーミングライツ事業も展開し、財源の多様化を図っています。さらに、「J-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業)」への採択は、私たちにとって大きな追い風です。これにより、本学の強みとなる研究分野を一層伸ばし、外部資金獲得を加速させるとともに、最先端研究を通じて社会貢献へつなげることが期待されます。国立大学法人は、日本の学術研究の基盤であり、その成果を社会へ還元するという重要な役割を担っています。元来、収益獲得を目的とする組織ではないものの、法人化以降の厳しい財政下では自己収入増に向けた取り組みの推進は不可欠です。特に国の財政状況を鑑みれば、運営費交付金に頼るだけの財政基盤では今後の発展は望めません。いかに自助努力を進められるかが、これからの国立大学の命運を握ると考えています。そのような中で、寄附金やクラウドファンディングによるご支援など、多くの方々からの温かいご厚意が、教育・研究・診療活動の充実につながっています。本学の取り組みにご支援をいただいていることに心より感謝申し上げますとともに、その成果を国内外へ力強く示していくことが、私たちの責務であると強く感じています。信州大学が国立大学法人としての使命をこれまで以上に果たし続けられるよう、引き続き皆さまのご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。現在、日本の国立大学は、法人化以降初めて経験する物価高騰という事態に直面しており、その影響は財務状況に深刻な影を落としています。信州大学も例外ではありません。本学の令和6年度決算は、法人化以降初となる11.4億円の赤字(損益ベース)を計上しました。これは、昨今の急速な物価高騰に起因する諸経費の大幅な増加に、大学が持つ従来の収入策だけでは対応しきれていない結果です。附属病院収益をはじめ、大学全体の経常収益は5%以上の伸びを示したものの、物価高騰に伴う費用増はそれを上回る伸び率となりました。この財政状況の悪化は、老朽化した設備の更新など、本来必要となる投資を先送りせざるを得ない状況を生み出し、本学の教育・研究・診療活動へ悪影響を与えることは確実です。これまで培ってきた知的資産や社会貢献への取り組みを衰退させず、さらに強化していくためにも、この難局を乗り切る必要があります。令和6事業年度決算概要と信州大学の財政的難局Integrated Report 2025 Shinshu UniversityMESSAGE46Shinshu University Integrated Report 2025難局打開に向けた取り組みの推進と皆さまへのお願い信州大学 理事(総務、財務担当) 安彦 広斉信州大学を襲う物価高騰の波紋と将来への投資に向けた経営努力

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