統合報告書2025
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ビジョンと経営戦略活動実績ガバナンス人と地域の資産財務情報※「柳田邦男文庫」は2025年11月に開設予定です。 柳田 邦男 PROFILE1936年、栃木県生まれ。ノンフィクション作家、評論家。現代における「いのちの危機」をテーマに、戦争、災害、事故、原発、病気、事件などについて、60年以上にわたり、取材と執筆を続けている。1972年に『マッハの恐怖』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞、1979年に『ガン回廊の朝』で第1回講談社ノンフィクション賞、1995年に『犠牲―わが息子・脳死の11日』とノンフィクションのジャンル確立への功績が高く評価され菊池寛賞を受賞している。ライチョウ標本(自然科学館所蔵)企画展ギャラリートークんからその話を聞いた宮坂さんが「捨てるのは惜しい」と、信州大学附属図書館に寄贈の相談をしてくださったんです。図書館の方も、快くその申し出を受けてくださり、2023年10月に寄贈に至りました。―ご寄贈いただいた本を拝見すると、ジャンルが本当に多種多様ですが、これらの本は柳田さんがノンフィクションの作品を執筆するために集められたものなのでしょうか。そのような目的で集めた本も多くあります。現代社会では、ひとの人生とも濃密に絡み合いながら、科学技術や政治、行政、法律といった専門性の高い事柄で様々な問題が顕在化しています。例えば、事故や災害、都市の過密化、公害などの問題がありますね。ノンフィクションは従来の小説家が手を出さない、あるいは手を出せなかったこうした専門性の高いテーマを扱うことなどから、私は魅力を感じて60年代から取材と執筆に取り組んできました。70年代から80年代に掛けて日本においてノンフィクションのジャンルは確立されていきますが、私もその一端を担ってきたと意識しています。―最後に、学生に対してメッセージをお願いします。学生時代はまだ“白地図”の状態で、自分の人生をどう描いていくかは未知数です。それだけに、あれもやりたい、これもやりたい…と進むべき方向を決めきれなかったり、あるいは逆に、やりたいことが見つけられなかったりする人もいます。悩みが多い時期ではありますが、学生時代は「可能性を自分の中に少しずつ蓄積していく時期である」という意識を持つことが大事だと思っています。そのような意識を持ち、例えば本を読むとか、あるいはソーシャルリサーチなどに参加して現場に足を運ぶとか…、何でもいいから動いて考えて経験してみること。そして、その経験の一つひとつを大事にしていくことが、いつの日かものすごく自分の人生にとって役立つ時が来るはずです。白地図の学生時代に、悩みながらも、本を読み、考え、議論し、現場に足を運んで、ぜひ色んな経験をしてください。今回の蔵書の寄贈がその動機づけになれば幸いです。本学が所在する長野県は、広大な面積を持ち、その中に日本有数の豊かな自然を有しています。日本アルプスを中心とした美しい山々、多数の河川、谷、盆地といった様々な地形の中に、多種多様な動植物が生息しており、ライチョウなどの絶滅危惧種も多く見られます。松本キャンパス内の北東にある信州大学自然科学館は、それらの多様な自然環境に関する資料を幅広く収集し、保管・研究に取り組んでいます。また、資料は学生の実習にも利用されています。資料の中でも特に標本は約40万点にも及びます。ライチョウの標本から、旧制高等学校時代に利用されていた標本・器具、大正初期に作られた長野県内の動物標本なども保管されており、自然的・歴史的に非常に貴重なものとなっています。大学史資料センターは、前身校を含む本学と地域の歴史に関する、散逸が危惧される資料を体系的に収集・整理・保存・研究しています。また、資料を活用した企画展の開催、大学史を学ぶコンテンツの作成・公開等を通し、大学の歴史を未来に継承していく活動を精力的に行っています。電子化された資料や企画展示の内容等はWebでご覧いただけます。関 連 施 設 自然科学館関 連 施 設 大学史資料センター人と地域の資産未来につなぐ文化資産 Integrated Report 2025 Shinshu University39現場取材と生身の声に一貫してこだわり貴重な学生時代 経験の一つひとつを大切に04

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