信州大学は、J-PEAKS研究大学としての責務を胸に、地域と世界をつなぐ知の創出に挑み続けています。私たちの使命は、単なる知識の蓄積にとどまりません。それは、人類の尊厳を守り、持続可能な未来を拓き、公正な社会を築くための普遍的価値を共創することです。この壮大な営みを支えるのは、「信大フィロソフィー」に根差した、揺るぎない覚悟にほかなりません。この普遍的価値の共創を具体化する一例が、ARG(アクア・リジェネレーション)構想です。「水の惑星・地球におけるサステナビリティの実現」という独自のビジョンのもと、水資源やグリーン水素に関する革新的な研究を推進しています。水という普遍的課題を基点とするこの構想は、信州のフィールドに根差した実践でありながら、アフリカ、アジア、中東といった地域に広がり、地球規模の課題に応答しています。地域での実践が世界に波及し、世界での成果が地域に還流する。この「グローカルな往還」こそが、信州大学の独自性であり、私たちが目指す知的エコシステムの核となります。このグローカルな往還をより高度かつ広範に展開するため、ARG分野の裾野を広げ、信州大学全体としての取り組みに昇華させることが不可欠です。一人ひとりの意識変革と行動変容を通じて、普遍的価値の創造を持続的に提供することで、地域の中核である研究大学としての使命を全うし、地域と世界からの信頼に応えていきたいと考えています。2024年度、私は本学のあるべき基本理念としてDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)の重要性を提唱しました。2025年度はさらに深化させ、DEI&B(Diversity, Equity, Inclusion & Belonging)を新たな指針として掲げます。多様性・公平性・包摂性の確保は大学の責務ですが、それにBelonging(帰属意識)が加わることで、大学は初めて真の共同体としての力を発揮します。多様な研究者、学生、教職員が互いに帰属意識を持つことが、大学の真の力を引き出します。このBelongingとは、単なる安心感ではなく、「共に未来を築く意志」であり、ステークホルダーの皆様を含む共同体全体で分かち合うべき挑戦です。信州大学は、このBelongingの精神を育み、地域に根差しながら国際的な知のネットワークを広げ、普遍的価値を共創してまいります。地域と世界の課題をつなぎ、相互に響き合わせることによって、単なる教育研究機関にとどまらず、未来社会をデザインするグローカル拠点となるのです。未来は与えられるものではなく、共に創り出すものです。地域中核大学として、私たちは、未来を担う人材を育成する「学び」の機会を提供し、相互理解に基づく「寄り添い」を通じて共同体を強化します。また、「知の拠点」として革新的な成果を生み出し、これらを地域・世界と「つなぐ」ことで、より豊かな「未来を生み出す」という知的エコシステムのサイクルを回す使命を果たしてまいります。この統合報告書を通じて、本学のフィロソフィー、挑戦の成果、そして未来への確かな歩みをご理解いただければ幸いです。普遍的価値を羅針盤とし、そこに希望と夢を重ね、次世代に継承すべき叡智を形づくっていく。この挑戦の意義にご理解を賜り、共同体の一員としてのBelongingの精神をもって、私たちと共に歩んでいただきますようお願い申し上げます。地域の実践知から生まれる「グローカルな往還」新たな指針「DEI&B」と未来を築く意志ステークホルダーの皆様へ学長挨拶2025年11月Integrated Report 2025 Shinshu University02「普遍的価値」の共創とBelongingを礎に、未来社会をデザインする
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