統合報告書2025
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ビジョンと経営戦略活動実績ガバナンス人と地域の資産財務情報位1(北陸・甲信越エリア内)位14出典:文部科学省 令和7年2月14日公表「大学等における産学連携等実施状況について」令和5年度実績信州大学の産学官連携現在、研究を進めている具体的な評価方法は、水を含んだシートの上にタオルを一定時間置き、そのタオルを拾い上げて吸水量を調べるというものです。この評価方法では、撚りの掛かり具合が大きいタオルほど吸い上げやすさが優れる結果が得られており、このことから「実際の人の拭い心地に沿った評価方法になっている」と上條教授は話します。上條研究室では、ホットマン、近藤紡績所の協力も仰ぎながら、糸の繊維の長さや太さ、撚りの掛かり具合などを変えた様々なタオルを試作し、そのタオルを使って実験を繰り返す行うことで、この新たな吸水性評価方法の確立に向けて取り組んでいます。そして、評価方法の確立後は、その結果を学会などで発表しながら世の中にオープンにし、拭い心地という観点からのタオルの吸水性評価方法のデファクトスタンダードにしていくことを目指しています。上條研究室では拭い心地を評価する新たな吸 水評価方法の確立に向けた研 究を行っているというわけです。新たな吸水性評価方法が確立すれば、その評価方法をもとに抜群の拭い心地と肌触りを叶える“究極のタオル”が実現する日はそう遠くないでしょう。ただ、上條教授はその先の“オンデマンド”化を見据えています。モノの使い心地に関する評価は、究極的には個人の感覚の差に行き着きます。Aさんにとって最も使い心地の良いタオルが、Bさんにとっても最も使い心地が良いタオルであるとは限りません。個人によって、肌触りと吸水性のバランスの好みは微妙に異なります。「感性工学のモノづくりとして、当然、最終的には個人の感性の差を考慮したオンデマンドを考えていく必要も出てくるでしょうね」(上條教授)。真に人が心地よいと感じるモノづくりとは―、真に人を幸せにするモノづくりとは―。モノづくりの本質を追求する上條教授の研究に、終わりはないようです。信州大学×ホットマン×近藤紡績所“究極のタオル”をつくるために信州大学学術研究院(繊維学系) 上條 正義 教授信州大学は民間企業や地域との共同研究に力を入れており、多くの実績があります。特に地域との共同研究は、北陸・甲信越エリア内でトップを誇ります。信州大学繊維学部 先進繊維・感性工学科 感性工学コースの上條正義教授の研究室は、老舗タオルメーカーのホットマン、紡績会社の近藤紡績所と、“究極のタオル”の実現に向けた共同研究を行っています。究極のタオルとは何でしょうか?「撚りを適度に掛けて、肌触りと吸水性のベストバランスを実現したタオル」と上條教授は話します。こうしたタオルの開発を目指した共同研究の中で上條研究室が担当しているのが、吸水性の新たな評価方法の確立です。皮膚や髪の毛の表面に付着する水分の“吸い上げやすさ”が優れていればいるほど、人は拭い心地が良いと感じるそうです。言わば「人の感性」に関わる部分ですが、こうした水分の“吸い上げやすさ”の評価方法は、日本ではまだ確立されていないのが実情です。JISを中心とした既存の吸水性評価方法がありますが、これは吸い上げやすさではなく、いかに水を吸って蓄えられるかを評価するものであり、拭い心地を評価できません。そのため、活動実績産学官・社会連携2023年度 信州大学における産学連携等実施状況Integrated Report 2025 Shinshu University共同・受託研究費受入額 301,899千円共同研究実施件数492件研究費受入額882,025千円同一県内企業及び地方公共団体との共同・受託研究実施件数160件民間企業との共同研究北陸・甲信越地方誰も実現したことのない“吸水感”の評価を最終ゴールは個人にあわせたオンデマンド!?23TOPICS信州大学の産学連携等実施状況(2023年度)INTERVIEW18 位\ 同一県内企業及び地方公共団体との\地域02

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