!!ドローンは、3Dマップの中で細かく座標化された点を結んだルートを飛行するようにプログラミングされています。事前に計算された数十種類のルートから、ネズミの出没場所に対して最適なルートが自動選択されます。待機中のドローンはAIから指令が出るとステーションから自動でテイクオフし最短ルートでネズミを追撃します。開発中のシステムでは最大5台まで連携させることができます。ATTACK!DRONE STATIONATTACK!Alert!本学と長野県松本工業高校、株式会社ヤマサ様とが連携した「いたずらネズミとお手伝いドローン」プロジェクトは、AIとドローンを駆使し、米穀倉庫内に出没するネズミを追い払うものです。2021年にヤマサ様より産学連携コーディネーターを通じて本学に相談が持ち込まれた際、トイドローン(重さ100グラム以下の小型ドローン)の制御ができる松本工業高校にも協力を依頼し、翌年から3者の連携によるプロジェクトが始まりました。本学が倉庫の3Dマップ作成とドローンの最適ルート探索を、松本工業高校がドローンの制御技術を担当し、ヤマサ様にはAIカメラで捉えたネズミの座標情報を提供していただきました。まず倉庫内に動くものをカメラが検知したら、それがネズミかどうかをAIが判断します。一定の確率を超えた場合には、対象物の位置情報づいたら、プログラムされた威嚇行動を行い、ネズミを撃退するという仕組みです。がクラウドにアップされ、ドローンに目標物までの最適なルートが指示されます。ドローンが目標物に近ドローンを目標物に向かって飛ばすこと自体は、GPSやセンサーなどを用いれば比較的容易に行えます。しかし今回使用したのはトイドローンであり、GPS等を搭載することができません。そのため事前に3次元空間を把握して、最適ルートを探るという課題がありました。まず工場内を距離計測可能なカメラで撮影し、それをもとに3次元的に空間をデータ化、現れたネズミまでの最適ルートをドローンに指示するシステムを構築しました。2024年に行った実証実験では、ドローンがダミー障害物の脇をすり抜けるような最適飛行経路を生成し、目的地に到達したドローンは仮想鳥獣に対して威嚇行動を実施、スタート地点までの帰還飛行を成功させました。精度の高い大型ドローンではなく、小型ドローンを使用して空間を認識し、最適軌道で目標物へ到達することに成功したこのシステムは、応用特許を取得するに至りました。本プロジェクトを始動するにあたり、ドローン制御をお願いしたいと松本工業高校に協力を要請した際には、快くご承諾いただき、電子工学部の生徒3人が課外活動として協力してくれました。彼らは実践的な能力が非常に高く、ドローンを飛行・威嚇行動させるプログラムをすぐに作ってくれました。ヤマサ様は、本プロジェクトを主導する立場として、的確な進捗管理をしてくれました。またプロジェクト終了に伴い、本学と松本工業高校が活動を終了してからもこのプログラムを使い続けられるよう、技術移転の期間が設けられ、ヤマサ様の担当者がプログラムを学んでくれました。3者がそれぞれに役割を果たした本プロジェクトは、産学連携の理想的ケースの1つだと言えるのではないでしょうか。信州大学では地域社会の発展やイノベーションの創出に向けて産学官金連携を推進しています。公的資金は民間企業等の資金を活用し、地域の企業・行政・教育機関などと共同研究を活発に行っています。こうした実績もあり、「大学の地域貢献度調査」で総合2位という高い評価を得ています。今後もこれまでの実績に加え、本学のシーズを広く紹介し研究結果の社会実装のきっかけを作る「信州大学見本市」、企業ニーズ・アイデアや地域課題を本学との連携で解決に結びつける「信州大学連携コーディネーター制度」など、幅広い活動に取り組み、新たな共同研究や事業共創につなげていきます。本学の施設等の有効活用を図り、財源の多元化を通じた、教育研究環境の向上に資する取り組みとして、保有施設やその他財産への命名権付与(ネーミングライツ)事業を実施しています。本事業は、本学の教育・研究の質をさらに高めるとともに、地域社会との連携強化を目的とした戦略的なパートナーシップの一環となります。本学と契約を結び本学所有の施設の命名権を付与された法人等を「ネーミングライツ・パートナー」と呼び、ネーミングライツ・パートナー様は本学施設及び構内に別称等のサイン、案内看板等を設置することができます。新たな共同研究や事業の共創へAIとドローン技術で倉庫に出現するネズミを撃退ネーミングライツで地域社会との連携強化Integrated Report 2025 Shinshu University3者の連携が実を結んだ産学連携の理想ケース実証実験成功から応用特許の取得へ22Shinshu University Integrated Report 2025INTERVIEW企業・高校・大学3者が連携し成功させたプロジェクト信州大学 工学部 中村 正行 特任教授国内屈指の産学官連携で地域の諸課題を解決に導く3DMAPAI
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