ビジョンと経営戦略活動実績ガバナンス人と地域の資産財務情報握手を交わす手嶋機構長とDr. Adam O. Kariaタンザニア水研究所長真 摯に研 究に取り組むことで、世 界のしやすくなります。地域貢献をしながら世界モデルをつくり、世界展開する―そのための大事な実証タウンです。―信州で作った実証モデルが、世界中で創造的に発展される核になるということですね?手嶋:はい。信州には山間地もあり、山も、都市部も、農村部もある―その意味では、水に対する多様な需要がある地域であり、水への様々な課題が集まった場所とも言えるでしょう。 世界には水のない地域や、人が少ない地域、逆に大都市や海沿い地域など、様々な場所がありますが、そういう地域に対し、多様な形で信州モデルを提案できるようになるのではないでしょうか。 水が豊富にありながら、多様な環境を合わせ持っている信州は、水に対して研究に取り組んでいく好適地だと考えます。―2025年から新たに発足した「超学系」はどのような組織で、何を目指すのでしょうか?手嶋:漢字を見ると、「学問を超える」と書きますよね。非常におもしろい言葉です。超学は、融合とも捉えられます。様々な学問分野が融合されてできあがるというイメージですね。それによって、既存の学問を超えていくということであり、学問の壁を越えて集まることです。 私は以前より学問領域を超えた共同研究にとどまらずに、新たな学問領域を創造することを目指すという意味で「クロスブリード」という用語のもとに研究者間の共同・共創を進めてきましたが、それをさらに大学全体に広げていくことを目指すのが「超学」だと考えています。―超学系の次なる構想を教えてださい。手嶋:クロスブリードの考え方を持った人々が、一つの新しい価値を創造しようということで、アクアロジーに対して集まったのが今の超学系です。 それがアクアロジーという一つの形になったわけですが、そこで終わらず、次なる学問体系が生まれることを期待しています。もちろん、現状ではまだそこに答えがあるわけではないので、アクアロジーを成功させながら次を考えるのが超学のミッションとなるでしょう。 何が体系化されるかは研究者のこれからの頑張り次第ですね。―それらはどのような形で社会に還元されていくのでしょうか?手嶋:ARG機構も超学系も、社会に成果を還元する組織体であり、そのキーワードに、“アースポジティブ=地球再生”を掲げています。 地球というものをきちんと理解しながら人々が暮らせる環境をつくること、それとともに世界に笑顔を届けることが、基本理念です。―今年開催された大阪・関西万博でアクア・リジェネレーション体験型コンテンツを出展しましたが、来場者にどのようなメッセージを届けたのでしょう?手嶋:ARGのキーワードは“みずから、はじめる”です。「みずから」には、「水から」と「自ら」の2つの意味が込められています。万博では、「アクア・リジェネレーション」に関する体験を提供し、各自がどんなアクションを起こすことができるかを考えてほしいという狙いのもと、コンテンツを制作しました。―10年後の信州大学をどのように思い描いていますか?手嶋:―国内研究にとどまらず、信州大学から世界に解を与えること。そのためには世界から人々が集まれるような姿にならなければならないというのが、超学やARGを始めたモチベーションでした。10年後は、信州で見つけ出した世界的な「解」をもとに大学・地域・国・世界が一つのコミュニティとなることを目指します。それが「信州ユニバーシティ」です。その言葉にすべてが込められています。 ビジョンと経営戦略第2特集―国外における研究についてはいかがですか?手嶋:例えば私が活動しているアフリカのタンザニアでは、「水省」という省庁が存在します。それだけ水に向き合わなければいけない地域ということです。その省の中に「水研究所(Water Institute)」(高等教育と応用研究を担う水分野の中核機関)というのもあるのですが、本学はそことも連携しています。フッ素除去研究センターという、課題をより明確にした研究機関があるのですが、そこにサテライトオフィスを造る計画があり、2025年度中にアフリカにも拠点ができる予定です。―長野県内に構築する「実証タウン」が世界の水問題解決にどのように貢献していくのか、その構想について教えてください。手嶋:信州を実証タウンにして、水に対し様々な地域から人が集まる環境ができあがると考えています。 例えば水循環モデルを作ることによって、その循環に興味がある人が集まります。また水から水素を作る施設を造れば、エネルギーに興味を持つ人が集まります。 アクアロジーという学問ができれば、研究者だけでなく、学びたいという人も集まるでしょう。このように、1つの実証タウンから始まり、水の研究のハブになるということ。これはまさにARCHが目指すことであり、ハブになることによってソリューションも提供Integrated Report 2025 Shinshu University水・水素関連技術の実証タウン構築へ学部の枠を超えて水研究を進める11番目の新たな学系 超学系発足大阪・関西万博への出展これからの信州大学1101
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