ビジョンと経営戦略活動実績ガバナンス人と地域の資産財務情報多様な背景を持つ人々が共に学ぶキャンパスこそが、真のグローバル教育の場となるからです。(米倉)性と人材の流動性を再生する拠点としての役割を果たしていきたいと考えています。本年度は応募するところまでには至りませんでしたが、今後は大学ファンドの活用を視野に入れ、本学の特色ある先鋭研究分野を核とした国際的な人材交流と共同研究の推進を積極的に進めていきます。水を中心とした地球環境再生を目指すアクア・リジェネレーション(ARG)分野や世界を牽引する繊維科学分野など、本学が誇る知の強みを基盤として、グローバルな頭脳循環を創出していきたいと思っています。 信州の地から発する知が世界をめぐり、世界の叡智が再びこの地に還流する。そのような知の往還こそが、信州大学が目指す国際連携の新たなかたちです。そしてそれは、本学が世界と共に歩み、普遍的価値を創造するための羅針盤となるものと確信しています。毛賀澤:信州大学のグローバル戦略が非常に多角的かつ具体的な形で進められていることがよく分かりました。最後に、信州大学が「覚悟のグローバル化」を通じて目指す今後のビジョン、未来図についてお聞かせください。この統合報告書をご覧になっているステークホルダーの皆さまへのメッセージと併せてお願いします。中村:本学は、「VGSU」という経営ビジョンを掲げ、地域の中核大学として、圏域を越えた広域連携による新たな価値創出に取り組んでまいりました。そして、この理念をグローバルな視点で深化させたものが「 VGSUグローバル版 」です。この理念を旗印に、J-PEAKS大学としてグローバル視点で知の拠点化を加速し、“世界につながる信州大学”を目指しています。 私たちは、地域中核大学としての役割を担いながらも、その挑戦は地域の課題解決にとどまらず、世界に通じる新たな価値を創造することにあります。特に、水に関する最先端の研究を推進し、この研究活動を基軸に、新たな産業が集積し、イノベーションが生まれるエコシステムの構築を目指します。このエコシステムは、地域社会の変革だけでなく、地球規模の持続可能性、アースポジティブの実現にも貢献するものです。米倉:学長が描くビジョンを実現するため、私が担当する国際部門では信州大学改革実行プラン「inGEAR 2nd STAGE」に基づき、具体的な行動を加速させていきます。 その中で、留学生の国内定着推進と地域社会のグローバル化は、本学が目指す地域共生社会の実現に不可欠です。現在、留学生の県内就職促進プログラム「留JOB信州」を推進していますが、これをさらに充実させ、地域・企業を巻き込んだ多文化共修を開発・推進することで、留学生と地域・企業の相互理解を深め、地域社会のグローバル化を牽引していきます。最近は特に留学生に高度人材としての期待が高まっていますので、留JOB信州の充実は重要であると考えています。 このほかにも、大学による海外同窓生の組織化にも取り組んでいきたいと考えています。ブラジルや中国、タイといった国には本学の卒業生や留学生が多くいますので、大学側がその同窓会組織の整備を進められればと思っています。こうした様々な取り組みを通じて、信州大学の「知」が世界中に広がり、また世界中の「知」が信州に集まる、持続可能なグローバル・エコシステムを構築したいと考えています。中村:海外同窓生という観点からお伝えしたいことがあります。冒頭で、世界では一部でDE&Iが非難されるようになってきていることに危機感を述べさせていただきましたが、私はDE&Iに、国や企業、コミュニティなどへの帰属意識(Belonging)を加えた「DEI&B」という考え方が重要ではないかと思っており、大学がグローバル化に取り組んでいく上で、この“帰属意識”こそが不可欠なのではないかと考えています。というのは、グローバル化の中で、「自分の大本はどこにあるのか」というルーツやアイデンティティの意識を持つことが重要だと思うからです。それがあることで、誇りを持ってグローバル化に取り組むことができる。そのような意味で、同窓生というコミュニティは自身のルーツやアイデンティティを確認する上で重要だと考えています。 最後に、信州大学のステークホルダーの皆さまに心より感謝申し上げます。本学の学生や同窓生が国内外で力強く活躍されていることは、本学の大きな誇りです。本学は、「VGSU」の理念を実践し、持続可能な未来を目指した教育・研究・社会貢献活動を一層強化してまいります。 私たちは、地域と共に成長し、地域の未来を支える大学として、不屈の挑戦を続けています。この挑戦は、地域の課題解決にとどまらず、地球規模の課題に光を当て、世界に通じる新たな価値を創造することにあります。本学は、地域と世界を結ぶ架け橋となる覚悟です。 「大学が変われば、社会は変わる。ありたい未来がそこにある。」この言葉を胸に、私たちは常に前進し続けます。引き続き、信州大学へのご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。 ビジョンと経営戦略第1特集Integrated Report 2025 Shinshu University09信州大学が描く、国際化の未来図世界に通じる新たな価値を創造地球規模の課題解決に貢献していく01
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