J-PEAKS大学としてグローバル視点で知の拠点化を加速し、“世界につながる信州大学”を目指しています。(中村)アクア・リジェネレーション分野を核に国際連携で全学的な“うねり”を※6)「VGSU(Vision for Greater Shinshu University)グローバル版:信州大学では、圏域を越えた広域連携により新たな価値創出を目指す経営ビジョン「VGSU」を2023年に策定し、2024年にはこれをベースに特にグローバル化についての基本理念を掲げた「VGSUグローバル版」を策定しています。Integrated Report 2025 Shinshu University サテライトオフィスの展開状況 報通信技術)を活用したオンラインでの国際共修)に加え、対面や仮想空間メタバースといった最新技術も活用することで、国際共修をさらに拡充していきます。この一環として、県内企業等と連携して地域課題を解決するPBL(課題解決型学習)型の国際共修も開発・推進しています。多様な文化背景を持つ学生が多国籍チームで協働し、現実社会の課題を解決できる人材の育成を目指しています。学生が世界を肌で感じる機会を増やすため、単位取得型の短期派遣プログラムも多数構築し、国際体験の場をより多く提供していきます。 さらに、大学の「顔」とも言えるキャンパスの国際化と、大学の魅力を世界に発信する国際広報も重要な柱です。キャンパス内の掲示物等の外国語化を推進し、国際的な学びの環境を整備します。また、留学生のOB・OGを「信州大学アンバサダー」という名称で組織化し、海外で本学の広報活動を担ってもらう計画も進行中です。毛賀澤:先ほど学長がお話されたように、信州大学では特に水に関わるアクア・リジェネレーション(AGR)分野の研究に力を入れておられますが、この点からのグローバル化の取り組みについてもお聞かせいただけますか。中村:水分野は本学がまさに今、国際化の取り組みで最も力を入れているところの一つであり、ここを中心に国際的な活動で全学的なうねりを作っていきたいと考えています。米倉:「研究と人の交流」の両面で取り組んでいきたいと思っています。まず研究面では、「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択された「水及び水由来グリーン水素」に関する研究を核に、国際社会で存在感を増すグローバルサウス諸国やサウジアラビア、東・東南アジア等との間でアクア・リジェネレーション分野のネットワーク形成を戦略的に進めています。2025年1月31日にブラジルで開催された日伯学長会議に参加し、サテライトオフィスを設置しているパラナ連邦工科大学との交流再開や新たな事業企画について合意できたことは、グローバル・ネットワークの質を高める取り組みの良い例です。 人の交流面では、名古屋大学とも連携し、グローバルサウス諸国との間で、水・農業・環境分野を横断した国際共修プログラムも構想中です。これは、学部3年生から修士2年生までを対象とし、短期滞在やオンライン講義、PBL等により、国際協働力と専門性の育成を目指すものです。本プログラムで育てたいのは、単に研究のみを行う人材ではありません。水関連の科学を共通言語とし、人種や文化を越えて心を通わせる「世界市民」です。中村:水分野を核とした海外での研究推進にあたって、「本気のサテライトオフィス戦略」というスローガンで、海外サテライトオフィスの展開も強化しています。例えば、韓国海洋大学校やタイのチュラロンコン大学、マレーシア科学大学(USM)など、海外10拠点に展開しています。サテライトオフィスでは具体的な研究交流や教育プログラムを展開しており、互いの強みを最大限に引き出すための戦略的な投資として行っています。 また、本学は地方創生をテーマとした日本・台湾の複数大学による連携プラットフォーム(TJA(Taiwan-Japan-Alliance))にも参加しています。アジア諸国とも連携して地方創生の研究、教育、実践に取り組むことで、ローカルな課題解決がグローバルな知見へと昇華されることを目指しています。 国際連携をさらに加速させる追い風となるのが、10兆円規模の大学ファンドを活用した研究大学強化事業です。近年、世界の学術環境は、政治・経済・社会の構造変動を背景に、不安定化の兆しを見せています。特にアメリカでは、学問の自由をめぐる議論や研究資金の再編、国際人材交流への制約など、アカデミアの根幹を揺るがす動きも見られます。こうした中で、優れた才能を惹きつけ、知の拠点としての信頼をいかに再生・強化していくかが、今まさに大学に問われている課題だと思います。 信州大学は、この世界的な潮流をしっかりと受け止め、知の開放 フランス サテライトオフィス・リール大学ドイツ サテライトオフィス・フラウンホーファー応用情報 技術研究所タイ サテライトオフィス・ナレースワン大学・チュラロンコン大学マレーシア サテライトオフィス・マレーシアプトラ大学(UPM)・マレーシア科学大学(USM)中国 サテライトオフィス・河北医科大学韓国 サテライトオフィス・韓国海洋大学校インドネシア サテライトオフィス・ブラビジャヤ大学ブラジル サテライトオフィス・パラナ連邦工科大学08Shinshu University Integrated Report 2025
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