総合人間科学系研究紹介2025
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29 植村 健 教授東京理科大学工学部卒業。東京大学大学院医学系研究科修了(博士�医学)。東京大学大学院医学系研究科助教、信州大学医学部准教授を経て 2017 年に信州大学基盤研究支援センターに着任。小笠原 寛 准教授法政大学マイクロナノテクノロジー研究センター研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、2011 年 1 月に着任。研究テーマは、細菌 の バ イ オ フ ィ ル ム 形 成に関わる遺伝子発現ネットワークの解明。共焦点レーザー顕微鏡とよばれる高解像度のイメージと三次元情報の再構築が可能な顕微鏡を用いて脳組織を観察することができます。蛍光タンパク質発現ウイルスで可視化した小脳プルキンエ細胞枯草菌の電子顕微鏡写真。多くの細菌は集団で生活している。特定の遺伝子の働きが活性化される培養条件の検討。細菌は外部環境の変化に応じて瞬時に遺伝子の働きを調節する能力を持っている。シナプスの電子顕微鏡像ゲノム情報を基に、細菌の集団化に関わる遺伝子を詳細に解析 研究から広がる未来脳の機能を支える複雑かつ精巧な神経回路が形成されるメカニズムを明らかにし、その神経回路網が記憶・学習、感情、意志などの脳機能を生みだす過程を解明することは脳科学の究極の目的の一つです。一方で脳の働らく仕組みのについての基礎的知見は脳機能の破綻によって引き起こされる精神疾患の病態の理解、治療戦略の確立に大きく貢献することが期待されます。卒業後の未来像脳科学とは、ヒトを含む動物の脳が生み出す機能について研究する学問です。脳の研究を通じて専門的知識、技術的だけでなく、論理的思考や問題解決能力身につけてもらいます。研究者、技術者だけでなく幅広い分野で活躍できる人材に育ってもらいたいと思っています。研究から広がる未来日々進歩する遺伝子解析技術により、今では有用菌から有害菌まで、多くの細菌種で全ゲノム配列が決定されています。その中には、私たちの生活を向上させるために役に立つ様々な情報が沢山含まれていますが、細菌はこれらすべての遺伝子機能を、いつも働かせている訳ではありません。細菌が状況に応じて遺伝子を働かせる仕組みを知ることで、個々の細菌の持つ能力を最大限に利用することも可能となります。卒業後の未来像社会的ニーズの高いバイオテクノロジーの知識や技術を学べるので、就職先としては食品メーカーや製薬メーカー、その他バイオ系企業等が考えられます。これまでの卒業生は、食品メーカー、バイオ医薬品メーカー、澱粉メーカー、繊維メーカー、精密機器メーカー、土木建設・リサイクル関連会社等に就職しています。高等動物の脳にはおよそ 1000 億個もの神経細胞が存在しています。この神経細胞同士が「シナプス」とよばれる構造で連結し、神経回路網を形成することで脳の情報伝達や記憶・学習をはじめとする高次の脳機能を可能にしています。発達期におけるシナプス形成不全、機能低下は自閉症、知的障害などの神経発達障害の発症と深く関係していると考えられています。脳のシナプス形成の分子メカニズムの解明は、脳神経回路網構築や作動原理の理解のみならず、神経発達障害の病因・病態の理解ならびに疾患の克服に向けた治療戦略の進展に貢献できると考えています。遺伝子実験支援部門肉眼では見えないミクロの世界で、単細胞の細菌はどのように生活しているのか―自然環境下で、多くの細菌はバイオフィルム(BF)を形成し、その中でお互いにコミュニケーションを取り合っていることが分かってきました。当研究室では、固体表面に付着した細菌が増殖を始め、やがて多細胞生物のような BF 形態に移行する過程で、どの遺伝子をどのように働かせているのかについて研究を行っています。このように細菌が BF を形成する仕組みを理解することで将来的には工業や医療の分野で問題を引き起こす細菌を標的とした、薬剤の開発にも役立てたいと考えています。遺伝子実験支援部門総合人間科学系基盤研究支援センター総合人間科学系基盤研究支援センター脳が働く仕組みの理解:脳の働きを分子から考えるミクロの世界の集団生活:ゲノム情報から見えてくる細菌の生存戦略とは?

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