26永井 康史 講師2017 年慶應義塾大学理工学 研 究 科 修 了 博 士( 理学)。その後オーストリア�英 国 で の 博 士 研 究 員 を 経て、2021 年に信州大学助教。現職に至る。図1:周期的ではないが概周期的なロビンソン三角形タイル張り図2:正方形を繰り返した周期的なタイル張り図3:非周期的なタイル張りの概周期性を示す回折像データサイエンス教育推進本部研究から広がる未来準結晶の発見は当時の化学の社会では完全に予想外だったようですが、実は似たような構造が可能であることはそれ以前に数学的に示されていました。数学者カントールは「数学の本質はその自由性にある」と言いました。自由に、かつ数学的な厳密性を保ちながら研究することは、数学の中に止まらないインパクトを持つと考えています。卒業後の未来像数学は複雑な現実から一部分だけ取り出してきてより単純な状況を研究するものなので、初めから1つずつ理解を積み重ねれば完全な理解を得ることができます。些細なことでも完全な理解を得ることは、その後どのような進路に進んでも役立つと思います。「タイル張り」を研究しています。タイル張りは幾何学的な図形ですが、代数や解析などの数学の他の分野と密接に関わっています。さらにシェヒトマン(2011 年度ノーベル化学賞)が発見した「準結晶」を通じて物理や化学とも深い関係があります。準結晶の構造は「非周期的(ある1つの構造の繰り返しでない)」が、「周期的に『近い』(ある程度繰り返しがある、概周期的)」という不思議な性質を持ちます。このために、非周期的で概周期的なタイル張りを研究することが大切です。右図2が、正方形が周期的に並んでいる、周期的なタイル張りです。図1が非周期的だが概周期的なタイル張りです。一見不可能な構造を数学的に解析する 総合人間科学系教育・学生支援機構データサイエンス教育推進本部
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