立ち上がり動作は日常で頻繁に行われる動作で、人は自然に効率の良い動作速度を選択しているが、なぜその速度に決まるのだろうか。筋トルクの角力積は遅い起立で大きくなり、速い起立で小さい。逆に相互作用トルクの角力積は遅い起立で小さくなり、速い起立で大きくなる。従って、快適速度の起立がちょうどよい。服薬前後での活動量計の経過を示したグラフ服薬後は歩数・運動エネルギー量とも増加している患者さんの足の硬さを測定中ハンドヘルドダイナモメーターによる下肢筋力測定では大腿と体幹の固定を行わないと筋力が有意に低く評価されてしまう。患者さんの歩行評価を実施中百瀬 公人 教授信州大学医療技術短期大学部 卒 業、理 学 療 法 士 免 許 取得。放送大学教養学部卒業、東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻修了(博士・障害科学) 2004 年に保健学科理学療法学専攻に着任。西澤 公美 教授2009 年より信州大学医学部保健学科に着任。2017 年信州大学医学系研究科保健学専攻博士後期課程修了。研究分野は、神経筋疾患を対象とした評価指標の研究や運動学習。を良くできるかを目指して、活動量計を用いた評価や、補装具による下肢の機能 理学療法の基礎として人の動きを解析する分野があります。私の研究室では三次元解析装置や床反力計、加速度計、ジャイロセンサーを用いて人の動きを客観的数値としてとらえ、なぜ、人の動きが効率的なのか等を力学の視点も含めて研究を行っています。 また、臨床的観点としては理学療法の治療効果の検証を身体活動量の観点からとらえることを始めとして、基礎として明らかにした加速度計などの評価方法を用いて応用することにも取り組んでいます。さらに、根拠に基づいた治療を行うため次の研究も行います。評価から治療内容を決定する過程を明らかにし、評価結果に基づき治療を行った時の効果の検証も行っています。 私の専門領域は小児の理学療法です。臨床では神経難病(筋ジストロフィー等)など遺伝性の疾患を持つお子さんに関わることが多いです。近年、筋ジストロフィーの医療の進歩は目覚ましく、次々と新しい薬が開発されています。それらの薬の効果を測るとき指標のひとつとなるのが理学療法士が提供する運動機能評価です。この評価は時に国際的に実施される機会があるので、どこの国でも正確で簡単に実施できる評価が求められていますがそれが難しいのが現状です。そこで私は、正確で・簡単で・苦しくない評価法を考案し、さらにはいかに身体機能維持に関する研究を行っています。―25 ―研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像基礎理学療法学基礎理学療法学 人の動きを客観的に計測できるようになることで、人の動きが理解できるようになります。それは正常な運動機能を持つ人だけではなく、障害を持った人の動きに対しても同様のことができます。これらのことを踏まえて、理学療法及び医療としての治療を考えることで、あらゆる状態の病気や、障害を持って苦しんでいる方々への手助けとなる新しい方法を発展することができると考えています。 理学療法学専攻を希望する皆さんは、臨床現場で働く理学療法士を想像していますよね。しかし、臨床現場の理学療法は、まだ根拠が十分に明らかにされておりません。患者さんに根拠に基づいた治療を行うためにも大学院に進学して研究する力を付けましょう。 筋ジストロフィーは、今や新しい治療法がさかんに開発されており、私が学生の頃に学んだ常識は既に崩されつつあります。しかし、筋ジストロフィーのお子さんに対する理学療法は、残念ながらあまり進歩がありません。その理由はエビデンスが少ないからです。だからこそ私たちがひとつひとつ積み重ねる研究成果は、現在進行形の医療の発展に間違いなく一役買うことができるのです。 本専攻で学んだ知識は、小児科のある全国の病院、または小児専門病院・施設などで活かすことができます。また、療育センターなど福祉施設に就職している理学療法士もいます。全体的には少数派の小児領域ですが、活躍する場は増えてきています。理学療法学専攻 目標とする理学療法士:理学療法学専攻 不治の病ではなくなりつつある医療の現実臨床に還元できる研究を行う理学療法士理学療法士のデータが求められている
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