25は情報系を勉強しようと思って入学したんですけど、通信という少し違う分野に出会って、そっちの楽しさに目覚めました。でも正直、他学科の授業を取るなんて選択肢、全然考えてなかったんですよね。「配属された学科の内容を学ぶもの」っていう固定観念があったというか。加藤 私も学科の壁は感じていて、隣の学科が具体的に何をやっているのか、深いところまではわからなかったんです。あるとき物質化学の友達が「実は自分のやっていることって電気電子に近いんだよね」と言っていて、「あ、学問ってつながっているんだ」と衝撃を受けたんです。改組後は先鋭融合コースと基幹となるコースに分かれると聞いたんですが、その違いやポイントを教えていただけますか?香山 実は10コースと言っても、1と9の構成なんです。9つの「基幹となるコース」は従来の工学の系統を整理したもので、化学系、環境系、土木系、電気電子、機械、知能、情報、建築などがあります。 「先鋭融合コース」は特別なコースで、基幹となるコースから2つを選んで学べるんです。教員がマンツーマンで伴走しながら、系統だった学習ができるようサポートします。工学部として初めての挑戦なので、まずは485名中20名という小さなグループからスタートします。私たち教員も「どう教えるのがベストか」を模索しながら、新しい学びを構築していく機会だと思っています。高校生からの需要が増えれば、人数も再構成していく予定です。加藤 新体制って、良いことばかりに思えるんですけど……何か課題はあるんですか?香山 課題は、実は教員側にあるかもしれませんね。これまでは比較的均一なバックグラウンドの学生さんに教えてきたのが、これからは多様な興味を持つ学生さんに教えることになります。私たち自身の教え方も進化が必要なんです。 もう一つは認知度の問題ですね。この取り組み、実は国内ではかなりユニークで、文部科学省の担当の方からも「思い切りましたね!」って言われるほどだったんです。高校生や先生方が安心して選べるよう、情報発信をしっかりしていかないといけません。在学生の皆さんも、ぜひ近くの方々に広めてくださいね。 逆に学生さんから見て、「今のままの方がいいな」と思う点はありますか?池田 私は入学してからコースが分かれる今のシステムも悪くないと思っているんです。最初は情報コースを希望していたんですけど、気づいたら通信に魅了されました。今では通信で楽しく研究しているんです。意図せず与えられた環境での「思わぬ発見」みたいなものもあるかなって。加藤 わかります! 私も入学時は漠然と「建築やりたいな〜」と思っていたけど、歴史や都市計画などいろんな分野を学んでいく中で、「あ、特に設計が自分に合ってる!」って気づいたんです。入学後に選択できる良さもあるかなと。香山 なるほど、発見的な学びはたしかに今のシステムの良さですよね。改組後は1年生の前期に全コースの基礎を学んでから、メジャーコース(主専攻)を確定させる仕組みを入れています。それに、1学科になることで他コースの科目選択もぐっと楽になるので、改組後はより自分に合った研究対象に出会えると思いますよ!池田 先鋭融合コースについてもう少し聞きたいんですけど、入学時にコースが決まるんですか? それとも入学後に選ぶんですか?香山 まず、先鋭融合コースは推薦入試のみなんです。面接では「あなたはどんな社会課題をどう解決したいか、9つのコースから2つを選んでその組み合わせ方を説明してください」という問いかけをします。入学後も1年生の前期で全コースの基礎を学んだ上で、改めてメジャーコース(主専攻)を1年後期に確定させるんですよ。池田 それすごく面白そうですね! 入学前に考えてた2コース以外にも「これも役立つな」って気づくかもしれないですし、新しい発見がありそうです。加藤 面白そうだけど、同時に大変そうでもありますね。私は建築の設計を学んでいて、模型作りに3D プリンターやレーザーカッターを使うことがあるんですけど、「もっと機械の知識やプログラミングの知識があれば表現の幅が広がるだろうな」って感じることがあるんです。でも何をどこで学べばいいのか自分で探し続けるのは大変かなって。香山 大丈夫です。先鋭融合コースには学生さんに伴走する教員がついて、一緒にカリキュラムを組み立てます。確かに自主性は必要ですが、教員も一緒に学びの道筋を作っていく体制を整えていますので、安心して相談してくださいね。池田 新しい工学部で育てたい人物像って、どんなイメージがありますか?香山 私たちは「π型人材」と「I 型人材」の育成を目指しています。I 型は一つの分野を極める人材、π型は複数の分野を組み合わせた人材です。先鋭融合コースではメジャーとサブメジャーを明確に設定してπ型人材を、基幹コースでは基本的に一つのコースを軸にI 型人材を育てていきます。 どちらも大切なのは、課題に対してどう取り組むか。自分の持っている知識をどう活かせるかを考えられる人材になってほしいという思いなんです。池田 私が目指す人物像は、柔軟性を持って様々な意見を否定せず受け入れられる人なんです。メジャーとサブメジャーの学習や他学科の知識を積極的に取り入れる新体制は、そんな私の理想にぴったりだなって感じます。加藤 私は建築設計において、単に便利で機能的なだけじゃなくて、人の「居場所」となる建物を作りたいんです。そのためには日々進化する技術や変化する文化・社会に興味を持ち続けて、自ら学び続けることが大切だと思います。香山 お二人の意見を聞いて、私たちの方向性は間違っていないと確信しました。ぜひこれから社会に出ていく皆さんには、改組後の卒業生にも注目していただき、時にはアドバイスもくださいね。ありがとうございました。
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