工学部研究紹介2026
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⾼⾼精精度度レレーーザザ観観測測技技術術をを⽤⽤いいてて宇宇宙宙へへのの窓窓::極極域域超超⾼⾼層層⼤⼤気気をを探探るる!!研究から広がる未来卒業後の未来像98研究キーワード光学計測 ・ 北極域 ・ 超⾼層⼤気 ・ レーザ ・ アクティブリモートセンシング准教授 川原 琢也私の学問へのきっかけ⼯学部の⼈にはよく、「⾃然科学の研究は⼈間のなんの役に⽴つのか」と聞かれます。しかし、⼈間の役に⽴つたたないかの問こそ狭い考えに思えます。「⼈間が持つ知的欲求」が根本で、それが⾃然科学に向いているだけと思います。原因が何で何が結果か、正しく考えられれば社会に出ても怖くありません。観測装置の原理の理解はエンジニアの基本で、その教育を徹底しています。また、研究発表は、伝える技術を磨くとともに論理的思考のための⼿法と位置付けています。これらはすべて社会に巣⽴ってから⾃分で考えて⽣きていける⼈間⼒の種になると考えています。最近の研究トピックス(1)レーザーを光源に用いた微弱光の観測は、強い昼間の太陽光の下では極めて困難である。 特に、 極域ではライダー観測は夜が長い極域の冬に限られているため、季節変動を捉えられていない。そこで、夏(昼間) の観測を目的として、Naライダー観測に特化した狭帯域フィルタの開発に着手している。(2)水素/重水素ガスを封じた吸収セルと呼ばれる人工衛星搭載型光学観測装置で、真空紫外領域の水素/重水素Lymanα線の観測を行い、惑星周辺の同位体比から大気からの水の散逸過程を調べる。私は、「宇宙の謎」以上に、⼈間も不思議だと思っています。この宇宙は、⼈間の存在と関係なく科学の法則で成り⽴っています。「宇宙は神様に作られた」は正しいかもしれません。⼀⽅で、宇宙の中にたまたま⽣命豊かな地球が⽣まれ、動物の中でなぜか⼈間だけが⾃然法則に興味を持ち、その解明に挑戦ています。我々はなんなんでしょう?もしかするとそれすら宇宙のプログラムの⼀つなのかもしれません。⾃然科学に向き合う機会を与えていただき、私はありがたくその機会を⽣かしているという感じです。研研 究究 シシシ ーー ズn 極域超高層大気観測n ライダー計測の昼間観測手法の確立n 計測制御工学の大気観測への応用n ライダーで昼間観測のための観測器開発n 高度200kmまで夜間の観測高度拡張n 精密波長計測技術の研究n 宇宙天気、太陽フレア共同研究・外部資⾦獲得実績l 極域大気レーザセンシング:中性大気温度風速の下部熱圏観測・年間観測への進化(代表 科学研究費 基盤研究(A))l ナトリウムライダーの新規観測モード:3次元観測への拡張(代表 科学研究費 基盤研究(B))l ナトリウム温度ライダーに応用するレーザ周波数の超精密制御方法の研究(代表 科学研究費 基盤研究B)l 極域温度モニター用高出力ナトリウム・ レーリー温度ライダーの基礎研究(代表 科学研究費 挑戦的萌芽)l 昼間観測のためのナトリウム温度ライダー用超狭帯域光学フィルタの開発と特性測定(代表 科学研究費 基盤研究B)l 南極域における下部熱圏中間圏の温度構造/ エネルギー結合過程に関する研究(代表 科学研究費 奨励研究A)l 昼間観測のための中間圏ナトリウムライダー用ファラデーフィルターの開発(代表 科学研究費 奨励研究A)⽇本初の⽕星探査衛星の光学観測機開発で博⼠学位を取得。 2007年より現職。ナトリウムライダーを含む光学観測の研究に従事。 第40次南極越地域観測隊隊員。オーロラに向かって射出されるレーザー光ノルウェーのEISCATレーダー観測施設に設置した⾼出⼒ナトリウムライダーのレーザの⼀部。レーザー波⻑の超精密制御を⾏う。最低気温が-20℃にもなる冬季 のEISCATレーダー観測所から、宇宙に向けて射出される⻩⾊のレーザー。オーロラ活動時の⼤気温度の空間変動を調べるため、5⽅向に射出。ライダー観測に⽤いられる複数の光学望遠鏡川原研究室では、地球や惑星の⼤気を計測する光学的な観測技術に関して研究を⾏っています。私たちは北極域でレーザという特殊な光を空に射出し、⾼度100km以上でオーロラが光っている領域の⼤気温度や⾵速を観測しています。これは、「ライダー」と呼ばれる光計測技術で、距離情報を得る⼿法です。⾝近な応⽤としては、 対象物までの距離を⾼精度で計測する技術として⾃動⾞の⾃動運転技術への開発が始められています。QRを配置

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