60自然と調和しつつエネルギー不足を回避するためには、新エネルギーを開発するだけでなく、エネルギーの使用量を減らすことが不可欠です 。太陽熱利用、吸収式冷凍機、蓄熱システム、ヒートポンプなど、エネルギーの有効活用の研究は、人々の未来の暮らしを豊かにします。浅岡研究室で身につける熱の知識は 、工業製品の設計などの仕事をする際にとても役に立ちます 。研究室の卒業生は、空調機器メーカーや自動車関連メーカー、重工業メーカーなどで活躍しています。た く さ ん の 卒 業 生 と 共 同 研 究 や OB会などで交流を続けています。吸収式冷凍機の原理で氷スラリーを作ることで 、廃熱のエネルギーを冷凍・ 冷房用途で有効利用する研究 。左図は自作の実験装置。装置内で水を減圧して蒸発させ 、蒸発潜熱による冷却作用で右図のような氷スラリーを生成します。吸収式冷凍機の再生器に廃熱を供給し続けることで連続的に氷を作ることができ、周囲を冷やすことができます。左図は100℃ 程度の熱輸送に適した熱輸送媒体のエリスリトールスラリーが管内を流れる様子。閉塞などの事故のない安定した流れをつくるために、流動特性を調べています。エリスリトールの結晶は右図のような小さな粒子でその大きさや形が様々な特性に関係しています。東 京 工 業 大 学 大 学 院 博 士課 程 を 修 了 後 、 青 山 学 院大 学 助 教 を 経 て 、 2013 年より現職。熱 工 学 、 伝 熱 工 学 、 冷 凍技 術 に 関 係 し た 研 究 に 従事。常識をくつがえすような新技術の誕生により時代が大きく前進してきました。そんな新しいアイディアを自分でうみだすことができたらカッコいいと思っています。エネルギー問題は私が子供のころからの大問題ですがいまだにほとんどの課題が解決できておらず、まさに今までの常識では解決できない難問に違いありません。エネルギーや熱は目に見えず扱うのが難しいですが、知れば知るほど面白いと感じます。まだほど遠いですが、未来の新発見に向けてがんばっています!勉強の合間にスポーツ大会や合宿旅行などをしてチームワークを大切にしながら卒業研究に取り組んでいます。毎年たくさんの学生が大学院に進学して研究を続けています。0℃の冷熱輸送に適した熱媒体の氷スラリーの輸送・ 回収実験の様子。 新しい技術なので、実験に使う装置は学生の手作りのものばかりです。浅岡研究室では、エネルギーを無駄なく有効に活用するための技術に関する研究を行っています。例えば、吸収式冷凍機を使うことで、今まで利用されることが少なかった80~200℃ の廃熱を、冷凍や冷房に利用可能な(価値の高い)熱エネルギーとして生まれ変わらせることができます。太陽エネルギーをうまく利用するには、社会の需要に適合するように、蓄熱・熱輸送システムのようなエネルギー供給システムを整備することが重要です。クリーンなエネルギー社会をつくっていくためにこれらの技術は不可欠です。研研 究究 シシ ーー ズ◼ 廃熱・太陽熱エネルギーの有効活用◼ 氷スラリー( 氷-水溶液の固液二相流)の利用による高機能熱輸送媒体の開発◼ 吸収式冷凍機の原理による氷スラリー生成機の開発◼ エリスリトール水溶液スラリーなどを用いた高温用熱輸送媒体の開発◼ 食品・薬品製造過程での蒸発・凝固融解現象の研究◼ 伝熱機器の設計・改良、氷の凍結などに関する研究共同研究・外部資金獲得実績⚫ 吸 収 式 氷 ス ラ リ ー 生 成 機 に よ る 低 質 未 利 用 熱 の 有 効 活 用(鉄鋼環境基金 環境研究助成 若手研究助成)⚫ 低温地熱および太陽熱の有効利用を目的とした蓄熱型吸収式冷凍機の性能評価(不二科学技術財団 研究助成金)⚫ 未利用熱等活用に資する革新的機器・デバイス開発/炭酸ガス分解用ソーラー集熱反応器の国際共同研究開発(NEDO分担)⚫ 非常用水素供給発電システムの熱エネルギーマネジメントによる省エネルギー化(成長型中小企業等研究開発支援事業)⚫ 光 / 熱 成 分 の 分 離 利 用 に よ る 太 陽 エ ネ ル ギ ー の 高 度 利 用(中部電気利用基礎研究振興財団 研究助成金)⚫ 吸収式氷スラリー生成機の開発(民間企業との共同研究)⚫ フリーズドライ効率化に向けた乾燥の基礎研究(民間企業との共同研究)エエネネルルギギーーをを有有効効にに活活用用すするるここととででエエネネルルギギーー問問題題のの解解決決をを目目指指すす研究から広がる未来卒業後の未来像研究キーワード私の学問へのきっかけエネルギー・熱工学・伝熱・蓄 熱・ 熱 輸 送 ・ 太 陽 エ ネ ルギー准教授 淺岡 龍徳
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