3 ●研究分野●研究分野主要学術研究業績主要学術研究業績●現在の研究テーマ1. 彫刻を考えなおす~18世紀後期から19世紀初めにかけて活躍した彫刻家アントニオ・カノーヴァの作品研究を起点に,複製・表面・受容・制度など,彫刻をめぐる多様な論点について,調査・研究・発言をおこなっています。その対象は古代彫刻から近現代彫刻,インスタレーションまで広範ですが,最近はとくに石膏像の歴史と機能,近代的なモニュメントの出現・展開について関心をもって研究しています。 2. 現代美術と切り結ぶ~元美術館学芸員という経歴・経験を活かしつつ,展覧会への協力や,現代美術に関する批評・執筆をおこなっています。3. ミュージアムと歩む~学芸員資格関連科目を担当する一方,長野県内の博物館・美術館の運営に多角的に協力。実践的に博物館の歴史・現在・金井 直 教授●現在の研究テーマ1.自然主義の可能性 ここで言う「自然主義」とは,人間のさまざまな営みも含めて,この世界で起きることは結局すべて自然現象だといえるのではないか,という見とおしのことです。実際,自然現象だとは考えにくい事象は少なくありません。たとえば善悪とか,心とか,数とか,言語とか,あるいは色だとか。私は長らく,この種の事象を自然主義的な世界像の中にうまく位置づける手立ての探索に取り組んできました。2.色の存在論 生物の知覚や色彩工学に携わる研究者に言わせれば,我々が見ている色は事物そのものが有する性質ではありません(また,反射や透過を経て事物から我々の目に届く光そのものの性質でもありません)。しかしそうだとしたら,どうして色は事物に備わった性質のようにしか見えないのでしょうか。事物の表面に無いのなら,色はどこにあるのでしょうか。いや,そもそも色は,どこかに「ある」と言っていいようなものなのでしょうか。私は,我々を困惑させるこういった一連の問いに,満足な答えを与えることを目指しています。篠原 成彦 教授2000~2007年,豊田市美術館学芸員。2007年より信州大学人文学部准教授。2017年より同教授。2017~2018年,ヴェネツィア大学哲学文化財学科客員研究員。2019~2024年,愛知県立芸術大学客員教授。日印文化協定締結50周年記念美術展(国際交流基金主催)キュレーター(2007年),あいちトリエンナーレ2016共同キュレーター。1995年,九州大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学の後,東京都立大学人文学部助手を経て,信州大学人文学部助教授(後に准教授),2013年より同教授。 美術を学ぶということは,たんなる趣味や娯楽の一領域ではありません。さまざまな時代・地域の創造的な経験にふれることで,現在の私(たち)を見つめ直す大切な契機を獲得することです。美術が培う多様性や差異への愛情は,寛容な社会,開かれたコミュニティづくりにも欠かせない要素でしょう。 哲学するために求められ,哲学することで身につく技能のひとつに,<問いをうまく立てる技能>というのがあります。もうちょっと具体的に言うと,<解き方の道筋が見えてくるような問いの立て方をする技能>です。さまざまな職場で求められる問題解決能力というやつの核心は,要するにこれでしょう。【論文】「不完全に添う」金井直,『小沢剛 不完全―パラレルな美術史』(千葉市美術館展覧会図録pp.26-30,2018年。岡倉天心の語る「不完全」の美学的背景を確認しつつ,その語をもって美術史と石膏像受容史にアプローチする小沢剛の制作の可能性について,明らかにしました。【著書】『像をうつす 複製技術時代の彫刻と写真』金井直(単著),赤々舎,2022年。約200年にわたる彫刻と写真の関係について,5つの章を立てて論じました。【著書】『彫刻の問題』白川昌生,金井直,小田原のどか(共著),トポフィル,pp.72-93(「代わりとしてのモニュメント,モニュメントの代わり」),2017年。モニュメントを論ずることで,近代彫刻史の読み直しを試みました。同時に,歴史事象の表象可能性についても考察。【著書】『自然の鉛筆』畠山直哉,マイケル・グレイ,青山勝,ヘンリー・トルボット,金井直,ジュゼッペ・ペノーネ(共著),赤々舎,pp.64-75(「写真と彫刻あるいは互恵性」),2016年。彫刻と写真という異なる芸術ジャンルの親和性と,写真技術の確立に彫刻が果たした役割について論じました。【翻訳(共訳)】『ART SINCE 1900』H・フォスター他,東京書籍,2019年。現代美術史の基本図書です。2023年 「相互作用説とエネルギー保存則」『中部哲学会年報』53号(中部哲学会) 相互作用的物心二元論はエネルギー保存則に抵触するという説の妥当性を検討しています。 2011年「事物は色をもちうるか」『哲学の探求』第38号(若手哲学者フォーラム) 色にかんする2種類の機能主義的理論を取りあげ,両者が抱えている困難について論じています。2009年「言語の起源/起源の言語」『岩波講座哲学』第3巻(岩波書店)所収 言語起源にかんする仮説が乱立している現状を,自然主義的観点から肯定的に特徴づけています。 2008年「クオリアとクオリア実感」『感情とクオリアの謎』(昭和堂)所収 いわゆるクオリア(感覚質)にかんする消去主義の戦略を提示しています。1994年「投機としての自然主義」『科学哲学』22号(日本科学哲学会) 自然主義は思想としてではなく,投機的なプロジェクトとして扱われるべきだと論じています。将来について,考察・発言しています。研究から広がる未来と将来の進路研究から広がる未来と将来の進路美学美術史学言語哲学,心の哲学哲学・芸術論コース哲学・芸術論コース
元のページ ../index.html#4