人文学部研究紹介2025-2026
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●研究分野●研究分野主要学術研究業績主要学術研究業績11単著・塩原佳典『名望家と<開化>の時代』京都大学学術出版会、2014年共著・川村肇、荒井明夫編著『就学告諭と近代教育の形成』東京大学出版会、2016年主な論文・塩原佳典「明治・大正期における郡域医療圏の持続」『日本史研究』第714号、2022年・塩原佳典「明治初年の博覧会と地域社会」『国立歴史民俗博物館研究報告』第236号、2022年・塩原佳典「史料を扱うこと」『ひとおもい』第6号、2024年『海賊からみた清朝:十八~十九世紀の南シナ海』(藤原書店 ,2016年)   18-19世紀に,中国沿海で活動していた海賊について,彼らの素性という社会経済的な側面のみならず,彼らを討伐しようとする清朝政府,あるいはイギリス,マカオのポルトガル人などがつむぎだす国際関係について分析を加えています(あんまりロマンのない話です)。『銀の流通と中国・東南アジア』(共編著,山川出版社,2019年)   アヘン戦争前夜,中国は不況に苦しんでいました。その,メカニズムは長らくアヘン密輸に伴って銀流出がおこり,その結果,貨幣としての銀が不足して高騰し,銀デフレに陥ったとされてきましたが,近年では,そこに疑義が示されています。では,19世紀前半の中国経済に何が起こったのでしょうか。国際学術会議で交わされた議論を軸に,1世紀を超える清朝経済史研究の成果を総括しています。『嘉慶維新研究:嘉慶四(1799)年上諭訳注』(共編訳,汲古書院,2023年)   みずから「維新」と称して改革に勤しむ清朝皇帝嘉慶帝の名義で発布された命令書(「上諭」)のうち重要なものを選んで翻訳したものです。「臣下が如意(孫の手のような工芸品)を献上してきたが,そんなことで朕の機嫌を取るようでは,朕は不如意である」などとダジャレもありますが,皇帝の「独裁」が実際にどのように運用されているのかが,よく分かる内容になっています。2008年、信州大学人文学部卒業。2013年、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。日本学術振興会特別研究員PD、神戸松蔭女子学院大学や立命館大学などの非常勤講師、京都外国語大学講師、畿央大学准教授、新潟大学准教授を経て、2025年より現職。2002年,千葉大学文学部卒業。2010年,東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員PD,武蔵大学,駒澤大学,筑波大学,法政大学などの非常勤講師を経て,2014年から現職。 ひとつの史料を共有し、そこに書かれている言葉からどれだけのことがらを「読む」ことができるか。着眼しだいで、同じ史料であっても複数の「読み」が引き出され、ひいては多彩な理解が浮かび上がる。こうした質の勉強を通して、社会のゆくえを見通す視座を鍛えたいと願っています。 歴史学は,結果がすでに出ている人間の行動や社会の動きを分析する学問です。東洋史学はアジア諸地域についての理解を深めるものですが,同時に,歴史学という学問手法を通じて,人間社会一般が持つ傾向なども幾分理解できるでしょうし,限りある材料を駆使して,自分の主張に説得力を与えてゆく技術も身につくでしょう。歴史学にかかわる知見は,成熟した社会の構成員に必要な要素のひとつとなっています。長野県諏訪郡にあった郡立病院の写真です(大正期に撮影)。設立されたのは明治前期で、半世紀以上にわたり地域医療を支えました。公立病院をめぐる動向から、地域社会における共同性の歴史を追究しています。個人宅や公共施設で未整理のままに保管されている史料を整理し、また読み解くことで、地域社会の歴史を調べています。●現在の研究テーマ1. 19世紀後半から20世紀は、日本社会が大きく変動した時代です。徳川幕藩体制が動揺・解体、幕末維新変革期から文明開化期を迎えます。さらに日清・日露戦争などを契機とし、資本主義社会へと構造転換が進みました。このかんの変動を、地域社会における政治や文化、教育や生活を主題としてとらえ返すことが、私の研究課題です。2. 近代化は、人と人、あるいは地域と地域など、社会の諸関係に変化をうながしました。たとえば地域社塩原 佳典 准教授●現在の研究テーマ1.清朝政治史    中国という巨大な国家は,どのようにしてその政策を策定し,実施しているのでしょうか。現代では共産党独裁といい,前近代には皇帝独裁であるといわれてきました。しかし「独裁」とは何でしょうか。「独裁」する立場にある人は,なんでも好き勝手に出来るのでしょうか。国家の政策というのは,なにに規定されて決まり,動いてゆくのでしょうか。17世紀から20世紀までを視野に入れつつ,清朝という王朝における政策決定過程(特に対外政策)について検討を行っています。2.清朝経済史    現在,中国の大国としての影響力はよく知られています。では,その影響力は昔から一貫したものなのでしょうか。じつはついこの間まで,豊岡 康史 准教授会に公立病院を設置するとなったときに、設立や維持の費用を誰が、どのようなかたちで負担するのか。また高度な医療技術を修得した医師をどこから招へいするのか。それらの具体相を再構成することで、近代社会の特質について考察しています。研究から広がる未来と将来の進路中国経済は,ちょっと貿易赤字が増えるとあっという間に不況に突入する脆弱なものであると自他共に認識されていました。では,その脆弱性はどこからくるのか。いまでもあるのか。いつからあるのか。米価変動や国際貿易収支などの分析を通じて,長期的な経済構造変動の検討を進めています。研究から広がる未来と将来の進路日本近現代史 清朝政治史・経済史歴史学コース歴史学コース

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