農学部研究紹介2025-2026
7/40

B3伊那キャンパス構内で採取した食用キノコ マスタケに含まれる新規生物活性天然物 inaoside A の単離・構造決定、全合成天然物化学研究の医薬品や農薬への展開河河村村 篤篤 助助教教筑波大学にて博士 (理学) を取得後、東京大学、米国 フロリダ大学での博士研究員を経て、2025年 4 月より現職。研究分野は、天然物化学、創薬化学。喜喜井井 勲勲 教教授授東京工業大学にて博士取得後、同大学 助教、京都大学 特定助教、理化学研究所 ユニットリーダーを経て、2020年4月より現職。研究分野は創薬 科 学 。 学 生 に は 「 なぜ」と「考える」ことを伝えたい。フォールディング過程フォールディング中間体(遷移状態)(Kii et al. Org Biomol Chem 2010)新しい創薬標的これまでの創薬標的ケミカルノックダウン:化合物によりフォールディングの進行を抑制することで疾患関連タンパク質の完成を阻害し、分解へと導くChemistryとBiologyの異分野融合研究ポリペプチド完成型タンパク質ダブルクリック反応:歪んだ炭素−炭素三重結合を有する化合物による有機化合物と生体分子の高速連結反応天然物化学研究室研究から広がる未来天然からは、人類の発想では補いきれない多様な化学構造や生物活性を有する物質が多く発見されています。これら生物活性天然物は薬学が発展した現代においてもなお、新たな薬を創出する可能性を秘めています。我々は、この薬の種となり得る新しい天然物を探し出し、人工的に作る手法を開発することで、天然物化学という基礎研究分野の発展のみならず、従来にない新しい医薬品や農薬への展開を目指しています。新規天然物の単離・構造決定から全合成研究までの一連の研究を通じて、有機化合物の精製技術や多岐にわたる機器分析技術、有機合成技術などが習得可能です。これらのスキルを以って、化学、製薬、食品メーカーなどで活躍出来る人材の育成を目指します。創薬標的科学研究室卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像取得研究技術:分子・細胞生物学、構造生物学、薬理学、動物実験、ケミカルバイオロジーなど卒業後の進路:製薬企業、ヘルスケア業界、食品会社、研究者など生物の行動や機能を制御する有機化合物、これらを天然有機化合物(天然物)と呼びます。生体内において天然物は何らかの役割を持っており、この役割を解明するためには天然物を構造式レベルで理解する必要があります。また、現在使用されている医薬品や農薬等には、天然物にルーツを持つものが多く存在します。天然物化学研究の発展は、医薬品や農薬などの分野にも応用されます。そのため、天然物化学研究室では生物由来の新規天然物を探索し(単離・構造決定)、発見した新規天然物を人工的に作る(全合成)、そして改良する(構造活性相関研究)研究を行います。顔顔写写真真私たちの研究室では、疾患に関連するリン酸化酵素に対する阻害剤を研究する過程で、このリン酸化酵素のフォールディング途中の遷移状態を標的とする阻害剤は選択性が高く、副作用が少ないことを発見しました (Kii et al. Nature Communications 2016)。この遷移状態を新しい創薬標的として、他の疾患関連タンパク質へと応用するための研究を進めています。医薬品や食品機能性成分としての化合物は、標的となる疾患関連タンパク質などへ結合し、その薬理作用を発揮します。しかし、化合物は標的以外にも結合することがあり、これによって副作用が引き起こされます。そのため、副作用を低減する、つまり標的への選択性を向上させる技術が求められています。私たちの研究室では、ポリペプチドからタンパク質へのフォールディング途中の遷移状態を標的とした研究を進め、創薬・ヘルスケア研究開発の課題解決を目指します。⽣ 命 ・⾷ 品 科 学 コース⽣ 命 ・⾷ 品 科 学 コース創薬標的タンパク質の科学-創薬・ヘルスケア研究の新しい概念を⽣み出す-⽣物由来の未知化合物を発⾒し、それを作って、改良する -天然物化学-

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る