農学部研究紹介2025-2026
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図 上段:斜面崩壊発生予測シミュレーションの事例(左:大分県竹田市,右:東京都伊豆大島),中段左:ネパールでの氷河湖決壊洪水調査,中段中・右:融雪泥流発生機構解明のための実験,下段:土砂移動観測サイト(左:和歌山県田辺市_電極板法,中:岐阜県高山市_振動法・音響法・電極板法,右:長野県松川町_バイパストンネルでの観測)精度の高い観測によってデータを取得する農地から発生する砂塵の発生メカニズムを明らかにして、その抑制技術を開発する農業⼯学研究室博士(農学)、修習技術者(農業)。長野県技術吏員(農業土木)を経て、1996年 信州大学に着任。さまざまな地表面の放射や熱エネルギーの振る舞いについて、気象学や土壌物理学を応用した研究を行っている。流域保全学研究室山地斜面における降雨の浸透から流出現象と斜面崩壊の関係,火山噴火による融雪現象,岩盤の凍結融解による物理的な破壊,様々な形態で起こる土砂移動,といった自然界で起こる多様な物理現象に触れ,それらによって引き起こされる土砂災害をいかに軽減するかという大きな課題に挑戦することで,安全な社会の構築に取り組んでいる,やりがいのある研究分野です。ひとつの研究手法にとどまらず,現地調査,現地および室内実験,コンピューターを用いた数値シミュレーション等,複数のアプローチから現象の理解に努めます。卒業生の多くは,国や都道府県の技術系公務員,建設系コンサルタントの技術職に就いています。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像B着任以来、トウモロコシ畑を試験地として、熱収支の特徴を検討しています。トウモロコシのような、背(草高)が高く葉の面積(葉面積)が大きい作物は,基準の蒸発散量を20%程度上回る蒸発散が確認できます。この形成機構を解明するため、緑被空間面積率(GSAi)を導入した蒸発散のモデリングに取り組んでいます。2016年までに、なぜ約20%多く蒸発散が生じるのかを明らかにしました。研究の成果によって、水の効率的利用が求められる地域で、水資源を高度に利用した灌漑農業が可能になります。このほか、高地の紫外線、橋梁路面凍結、農地砂塵、暑熱環境などの様々な現象のメカニズムを解明することで、環境修復やリスク軽減などの学術的、技術的な提案が可能になります。研究室のOB・OGは、幅広い分野で活躍しています。多くは行政技術者(公務員)、土木(橋梁)技術者、造園技術者です。海外の大学院に進学後、そのまま海外で活躍する林業技術者(インドネシア)や国連職員(イタリア)もいます。また、工業高等専門学校や高等学校で教育に従事する者もいます。農業工学研究室では、さまざまな地表面に出入りする熱エネルギーの形態を明らかにして、よりよい農村空間を創出するための研究を行っています。地表面を出入りする放射や熱エネルギーは、農地では蒸散や土壌水分消費、橋梁路面では路面凍結、人工芝のピッチやアスファルト面などでは、暑熱環境などを形成します。最新の観測機器を多数備え、精度の高い観測を行うと同時に、温度の観測値は研究室で継承された基準温度計を使用して校正され、古いデータでも正確に比較ができます。環境の形成要因を明らかにすることで修復が必要な場合は対応策を技術として確立することを目指します。鈴鈴木木 純純 准准教教授授堤堤 大大三三 教教授授京都大学防災研究所准教授,三重大学教授を経て2023 年から現職。専門分野は砂防工学で,斜面崩壊予測,山地河川内土砂移動計測,融雪型火山泥流等を研究。日本は災害の多い国です。信州は,特に急峻な山岳地帯や活火山,中央構造線沿いの脆弱な地質帯を有しており,土砂災害の多発地域と言えます。当研究室では,そのような土砂災害を極力軽減することを目的に,研究を行っています。研究テーマとしては,豪雨による斜面崩壊,火山噴火によって発生する融雪泥流,氷河湖決壊洪水等の発生メカニズムを探求し,その予測手法を開発しています。また,山体の岩盤からの湧水量を計測し,地下内部の水の流れを想定して深層崩壊の予測につなげることを試みています。さらに,総合的な土砂管理のため山地河川における土砂移動量の計測手法を開発しています。さまざまな地表⾯に出⼊りする熱エネルギーの形態を明らかにして、よりよい農村空間を創出します⼭岳圏森林・環境共⽣学コース⼭岳圏森林・環境共⽣学コース⼟砂移動の中⼼地で災害の防⽌に挑む27

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