ACD 試験流域に流量観測施設を設けて、流量を長期的に観測している(信州大学手良沢山演習林)単粒構造の土壌に比べ団粒構造の森林土壌では孔隙(隙間)が多く水が浸み込みやすい小小野野 裕裕 助助教教信州大学大学院、名古屋大学大学院を経て1990年より信州大学農学部。森林の水源涵養機能に大きく影響する森林土壌の働きについて研究を行っている。現在、荒廃した土壌の回復過程について研究中。上上村村 佳佳奈奈 准准教教授授米国SUNY-ESFおよび東京大学大学院、森林総合研究所、フランス国立農学研究所を経て現職。熱帯、温帯低気圧からの強風による森林被害の要因解明を目指し、主にバイオメカニクス的手法を用いた研究をしている。2018年台風24号の強風で発生した観測プロット内の森林風害の様子(上)とデータから推定した立木の動き(右) 治⼭学研究室水は私たち人間の生命維持に不可欠なものであり、毎日の生活にも欠かすことができない重要なものです。我が国の場合、水道の水のほとんどは、水源地帯である森林の土壌の中を一旦通過してきたものです。普段意識していないかもしれませんが、私たちの生活は森林と強く結びついているのです。水源涵養機能に大きく影響する森林土壌の働きを明らかにし、土壌保全につながる森林管理方法を開発することは、私たちの生命・生活を守ることを意味します。森林と人間が共生することは、私たちの生命・生活、そして森林を守ることにつながるのです。リスクマネジメント研究室研究から広がる未来卒業後の未来像森林の持つ機能を、理論と体験の両面からとらえることによって、自然の重要性や、自然現象を貫く原理や法則を理解し、突発的に起こる事象への適応力が身につくでしょう。卒業後は国家や都道府県等の公務員、環境調査会社等で主体的に活躍できる人材となるでしょう。研究から広がる未来森林の風害発生要因の解明と推定を行う本研究は、森林学、気象学、流体力学、バイオメカニクス手法などを組み合わせた分野横断型研究です。そのため各分野の研究者と協力し合いながら、実施しています。さらにこれらの研究を森林管理という実質的な活動へつなげていくという目標を持っています。まだ発展途上の研究ではありますが、国内外の多様な分野の研究者が一つの問題に取り組むことは、研究だけでなく、柔軟な思考を持つことができ、森林風害だけでなく森林の複雑な生態や構造の理解にもつながっていきます。卒業後の未来像自身の研究分野の追及だけでなく、多様な視野をもつことや、活発な議論ができること、さらに日本だけでなく海外で活躍できる社会人へ育ってほしいです。(左)(左)2004年台風23号による森林風害の様子(富山県)B治山学研究室では、森林の水源涵養機能(緑のダム機能)や、表面侵食・崩壊などの山地災害に関する研究を行っています。森林の水源涵養機能については、大学演習林等に試験地を設け、気象・土壌水分・河川流量などの観測を行い、長期的にデータを取得しています。とくに、「森林の水源涵養機能の本質」とされている森林土壌の働き(保水性、浸透・透水性)について、より詳しい研究を行っています。土壌保全を通して、森林の水源涵養機能を高めるための森林管理方法の開発を目指しています。台風や豪雨などの突発的な気象現象や近年の人工林の高齢化、手入れ不足などにより、森林では大規模な破壊(撹乱)が発生しています。特に大型台風や温帯低気圧によって膨大な数の木が倒伏したり折れたりしています。病虫害発生や土砂崩れなどの二次被害もあり、さらに地球温暖化の影響で被害の拡大も懸念されています。さらにこのような大規模破壊は、日本だけでなく欧州や北米等、海外でも発生していることから世界規模の問題となっています。しかし森林被害発生のメカニズムは、風の状況、木の性質、土壌状態、生態系等の多くの要素が複雑に絡み合っているため、未だに十分解明できていません。そのため国内外の多様な分野の研究者とともに、森林風害発生の解明に取り組んでいます。強⾵による森林・⽴⽊の破壊メカニズムを解明する⼭岳圏森林・環境共⽣学コース⼭岳圏森林・環境共⽣学コース森林の緑のダム機能を明らかにし森林と⽔資源の保全を⽬指すー治⼭学ー25
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