農学部研究紹介2025-2026
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農村振興に欠かせない農産物直売所や農産加工、農家民宿等も農業経営の一部。多くの女性たちが活躍している。現地の方々の勉強会等にも参加し、問題や情報を共有する。調査先では見て、聴いて、時には触れたり、嗅いだり、食したり…フィールドワークを通じ、現場の実態を自分の五感で確かめる。小小林林 みみずずきき 助助教教明治大学大学院農学研究科修了後、明治大学農 学 部 助 教 を 経 て 、2019年4月より現職。博士(農学)。専門分野は農業経済学、農村社会学。根が瘤状になる‘根瘤病’に感染すると球が小さくなり出荷できない(左上)。緑肥作物(左下)を栽培した後作のキャベツは根の瘤も少なくなり、生育も良好で球も大きくなる(右上)。西アフリカのサヘル地域の土壌(左上)は極端な砂質土壌で低肥沃度である。肥沃度改善のために限られた有機物を利用して(左下)、主要穀物を栽培しいるが(右上)、肥沃度改善にはより多くの有機物資源が必要である。研究から広がる未来農業経営学の対象は主に農業を行う経営体です。超高齢化社会を迎えた我が国の農山村では農業の課題は山積みです。しかしその一方で、多様な農業者や経営体が出現し、今までにない魅力的な農業を展開しています。本研究室では地域振興を目標としながら、農業経営体の育成を考えます。農業経営体のみならず、それらを取り巻く地域社会や食品・流通産業、消費者等、あらゆるものを研究の対象に取り込み、農業と農村の振興策を検討していきます。卒業後の未来像本研究室での主な研究方法はフィールドワークによる社会調査です。現場に身を置くことで、問題の所在と解決方法を考えます。調査先ではコミュニケーション能力も必須。現場での活動を通じ、実践力を養い、適応能力を高めることで、社会で活躍できる人材を目指します。研究から広がる未来卒業後の未来像今日の農政では農業経営体の規模拡大を支援・推進する傾向が強まっています。しかし、中山間地域をはじめ、農業経営の規模拡大が困難な地域も多く存在します。例えば長野県の農家数は全国1位(2019年時点)。多数の小規模な農家によって、農業という一つの産業が支えられています。こうした現実を前に、多くの農山村では自治体や集落を単位とした地域全体で農業の問題を解決してきました。その一つが「集落営農」という形態です。農業経営学研究室では、こうした農村の現状を踏まえつつ、農業経済学や農村社会学の考え方を援用しながら、時代に見合った農業経営のかたちを模索し、農業経営体の育成について考えます。現場での調査、多くの方々との議論を通じ、農業・農村をはじめ社会の問題をより深く掘り下げ、実証的な分析を行います。農業経営学研究室栽培⼟壌学研究室土壌は農業生産の基盤であり、全ての生命が生きていくための重要な基盤です。人間の利益だけを求めた土壌利用は土壌を荒廃させていきます。近年、その問題が徐々に現れ始めており、有機物を利用した土壌保全が重要と考え直されています。土壌を保全すること、これが持続可能な農業生産を生み出し、未来の子供達が生きていくための食料供給につながると考えます。鈴鈴木木 香香奈奈子子 助助教教国際農林 水産業研究センター 、国際熱帯農 業 研 究 所 ( IITA )を経て2019年4月より信州大学農学部。アフ リカの土壌肥沃度改 善や国内の土壌保全 についての研究に取り組んでいる。作物栽培、またそれを育む基盤である土壌を保全することの重要性について学んでもらい、農業生産物の安全性や持続的な食料供給について取り組んでいける人材を育成できたらと考えています。また、地元長野をはじめとする日本国内や海外の困窮している国々など、様々な地域における農業発展に寄与できる人材を育みたいと考えています。栽培土壌学研究室では、土壌を保全しながら持続可能な農業生産を行っていく方法について模索しています。主な研究内容としては、緑肥作物を利用した土壌病害の発症軽減の効果を明らかにすること、未利用の廃棄物が土壌保全や肥沃度改善に及ぼす影響を明らかにすることです。研究対象地域は、国内においては長野県の高冷地地域や準高冷地地域など、国以外においては、西アフリカのニジェール共和国などのサヘルと呼ばれる半乾燥熱帯地域です。全ての生物の生きる基盤である土壌を守ることに重きをおいて研究に邁進しています。14有機物の活⽤による⼟壌保全と持続可能な農業⽣産の⽅法を追求する農業・農村の実態から、地域振興を⽬指したこれからの農業経営を考える⾷料⽣産システム科学コース⾷料⽣産システム科学コース

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